ヒトコム サンウルブズ公式サイトヒトコム サンウルブズ公式サイト

スーパーラグビー2017 ROUND 8 クルセイダーズ vs. ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ
マッチレビュー

コラム4/15(土) 11:56
「クルセイダーズは1人1人が自分のやるべきことをしっかり意識して、特別な色を出すこともなく、継続してやるべきことをやっていました。尊敬に値するチームです」。スーパーラグビーの経験豊富なSH田中史朗の言葉通り、ニュージーランド(NZ)カンファレンス首位の実力をまざまざと見せつけられる内容だった。

4月14日(金)、ニュージーランド南島クライストチャーチのAMIスタジアムは、降りしきる雨で芝に水が浮く悪コンディション。それでも、PRワイアット・クロケットがスーパーラグビー176試合目という最多記録を達成したほか、世界最高のNO.8の呼び声高いキアラン・リード、ケガで第1節以来の登場となったSOリッチー・モウンガが復帰するなどクルセイダーズには勢いづく要因が揃っていた。

序盤はサンウルブズがディフェンス面で健闘。FL布巻峻介が好タックルで相手のミスを誘い、ドライビングモールを食い止め、FB松島幸太朗がスピードを生かしてのカバーディフェンスでトライを食い止める。しかし、スクラム、ラインアウトでは圧力を受け、防御背後にキックを使っても、クルセイダーズのFBデイヴィッド・ハヴィリにクリーンキャッチから切り返されるなど、自陣から脱出できず、苦しい戦いを強いられた。前半23分、クルセイダーズのボールのスクラムでペナルティーを犯すと、FWのラッシュで2つ目のトライを許す。

直後のキックオフは深く蹴り込み、この日がサンウルブズでのデビューとなったWTB後藤輝也が好タックル。相手のハイパントをジャンプしてキャッチした松島に、クルセイダーズWTBセタ・タマニヴァルが空中でタックルしたとしてシンビン(10分間の一時退場)となり、この後の攻撃から反則を誘って、26分、SO田村優がPGを決める。残念ながら、サンウルブズの得点はこれが最後だった。28分、クルセイダーズはFLピート・サミュがタックルで倒されながら左手1本で左方向にパスを浮かし、20歳のWTBマナサ・マタエレが左中間にトライ。怒涛の3連続トライで、29-3とサンウルブズを突き放した。

先発PRの浅原拓真は言う。
「何もできませんでした。(対面がクロケットということは)気にせず、自分たちのスクラムを組もうと思って臨み、最初はすごく良かったと思います。しかし、経験から来る対応力が相手にはあり、じわじわ押されてしまいました」

後半、サンウルブズはFW第1列を全員交代させ、流れを変えようとする。しかし、前半同様に押し込まれてボールを失い、追加点を奪われてしまう。その後は、ゴールラインを背負ってのディフェンスで粘ったが、後半11分、思い切ってディフェンスラインを押し上げたところでSOモウンガに背後にキックパスを使われ、交代出場のWTBジョージ・ブリッジに左コーナーに飛び込まれた。ピンポイントでスペースに蹴り込む正確なスキルに脱帽のトライ。以降も、キックキャッチのスキルや危機管理能力などで差を見せつけられる敗戦となった。

クルセイダーズは何も特別なことはしてない。サンウルブズがスクラムで対抗すれば、そのサイドを突き、素早くディフェンスが上がってくると背後にキックを使う。1つ1つの判断、プレーが正確だからこそスコアにつながった。サンウルブズは、先週のブルズ戦でうまく行ったキック戦略が跳ね返され、ボールをキープして連続攻撃を仕掛けても、すぐにミスが出た。
「強かったです。ただただ強さを感じました。フィジカルも強いですし、スキルの部分も高い。ニュージーランドのチームはこうも違うのかという、レベルの差を感じました」(木津武士)。

数字も大きな差が出た。ラインアウト成功率は、クルセイダーズが「94.4%」、サンウルブズは「73.7%」。スクラム勝率は、「100%」対「71.4%」。タックル数はサンウルブズの「161」に対してクルセイダーズは「61」。前節のブルズ戦で、20回のボールキャリー(ボールを持って走った回数)だった松島は、7回のボールキャリーに激減した(試合STATS)。自分たちのボールをキープできなかったこと、キックで手放したボールを再獲得できなかったことが明確に表れた。

「相手のプレーが激しく、身体の疲れもありましたし、フィットネスも落ちました。しかし、そこで耐えてこそ、スーパーラグビーで戦えるチームになれると思います」(田中史朗)。「クルセイダーズは80分間通して、いいパフォーマンスを出せるチームでした。先発も控えのメンバーも、同じようにラグビーの基本スキルが非常に高く、チームとして完成している。勉強になりました」(真壁伸弥)。

スーパーラグビーは毎週、試合が続いていく。特定のチームに勝つためだけの戦い方を準備する時間はない。シーズンを通して、サンウルブズが目指す戦略、戦術をいかに構築するか。来週はハイランダーズ、再来週はチーフスと、クルセイダーズと同等の力を持ったチームとの試合が続く。クルセイダーズと戦った体感を今後の強化に生かし、一戦ごとにレベルアップする姿を見せていくしかない。

©JSRA photo by K.Demura
CONTENTS
スローガン