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Round9 ジャガーズ戦マッチレビュー

コラム4/24(日) 13:15

待ちに待った初勝利は、92-17という大敗の一週間後にやってきた。「もし今週も悪い試合をしたら、先週が本来の力だと思われてしまう。きょうは、本来、サンウルブズが持っている力を見せられたと思います」。勝利の瞬間、「思いがけず涙が出た」というマーク・ハメットヘッドコーチは、選手達の努力を称えた。黒星が続けば観客数が減るのは当然のことだ。海外のチームも成績不振時はスタンドに閑古鳥が鳴く。しかし、7連敗を喫したサンウルブズの応援には、14,950人の観衆が詰めかけていた。

サンウルブズの選手達はその期待に応えた。昨年のラグビーワールドカップのベスト4入りを果たしたアルゼンチン代表選手を多数含むジャガーズに対し、ゲームプランはシンプルだった。相手陣で戦うための戦略的キックを多用し、相手陣に入れば少ないパスでディフェンスラインに対してアタックし、ボールキープを優先して連続攻撃を仕掛けた。試合開始早々にハイパントの競り合いで、ジャガーズのFBホアキン・トゥクレット、サンウルブズのWTBビリアミ・ロロヘアが負傷退場するアクシデントがあったが、ジャガーズは、エミリアーノ・ボフェリ、サンウルブズは笹倉康誉が入り、好プレーを連発して穴を埋めた。

前半5分、サンウルブズはSOトゥシ・ピシのPGで先制。その後は、ジャガーズのSOファン・マルティン・エルナンデスの正確なハイパントなどで防御を崩さる。2トライを奪われたが、20分、連続攻撃から笹倉が左コーナーに飛び込んで、10-10の同点に追いつく。32分にピシのPGで13-10とリード。しかし、34分、味方のショートパントに走り込んだボフェリにトライを奪われ、13-15と逆転を許す。PGを追加され、前半を、13-18で折り返す。

後半の立ち上がりは、相手のハイパントをサンウルブズのFBリアン・フィルヨーンがクリーンキャッチして観客席を沸かせ、チームメイトに勇気を与えた。5分、ピシの怪我の際にそのフィルヨーンがPGを決めて、16-18としたが、その直後、CTBデレック・カーペンターのパスをジャガーズNO8ファクンド・イサにインターセプトされてトライを奪われ、16-25と突き放される。

サンウルブズのものの見事なトライが決まったのは、後半16分だった。ジャガーズ陣内の22mライン上の左中間スクラムから右に展開すると、ボールはSOピシからCTB立川理道へ。立川の背後を外側に走ったピシにパスがわたると思われた瞬間、立川の右に走り込んだカーペンターにショートパス。カーペンターはそのままインゴールに走り込んだ。事前に仕掛けた、ピシが立川からボールを受けていたサインプレーの裏を使ってのトライだった。「その前に同じプレーを仕掛けたときに、ジャガーズのディフェンスが外に流れたので、ピシとカーペンターと話して裏のプレーを仕掛けました」(立川理道)

その後はPGを決めあい、26-25、26-28、29-28とスコアは二転三転したが、後半30分を過ぎてからはサンウルブズが攻勢に出る。後半31分、交代出場の安藤泰洋がラインアウトからのモールを阻止する値千金のターンオーバー。「モールで来たら倒す(ボール保持者をサックする)サインが出ていたので、ボールが見えた瞬間に飛びつきました」(安藤)。その直後のスクラムでもジャガーズの反則を誘った。「相手が嫌がって落ちたのが分かりました」(PR浅原拓真)。その後のタッチキックから攻め込み、最後は、ゴール前のスクラムから立川が決勝トライ。立川は天にボールを投げあげ、声をからして応援していたサポーターが総立ちとなる。ノーサイドの瞬間、堀江翔太キャプテンは男泣き。直後のインタビューでは「歴史的勝利を日本でできたことを、誇りに思います。大敗の悔しさをこの試合にぶつけよう。ポジティブに前に進もうと臨みました」と笑顔を見せた。

マーク・ハメットヘッドコーチは言った。「選手達はグラウンド内外でハードワークを続けてきました。長旅の疲れもあり、負傷者も続出する中で、月曜日になると選手達は笑顔で練習してくれました。ハル(立川)が言っていたのですが、ハッピーなチームになるのではなく、勝利を手に入れるチームにならなくてはいけない、と。そういう試合だったと思います」

攻守に大活躍だった立川は「あの大敗の経験をして、みんながあの状態に戻りたくないという思いでプレーしていた。何か新しいことをしたのではなく、もともとあったストラクチャーを80分間遂行できたということです」とコメント。先制トライをあげた笹倉は、「ホームでしかこの喜びは感じられない」と、苦しい時間帯にオオカミの声色で応援するなど選手達を後押ししたファンに感謝した。まさに選手とファンが一体となった初勝利だった。

サンウルブズの次戦は、5月7日、秩父宮ラグビー場で、午後2時15分にキックオフ。オーストラリアのフォースを迎え撃つ。

©JSRA photo by H.Nagaoka

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