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ジャガーズ戦がもっと楽しくなる 見どころガイド

コラム4/19(火) 18:00

アルゼンチン・ジャガーズのスーパーラグビー初陣は、2月26日、南ア、ブルームフォンテインでのアウェー試合で、チーターズ相手に4トライを奪い、SOサンチェスのキックも冴えて、34-33の逆転・逃げ切り勝利となった。ジャガーズには南アのチームと堂々と渡り合えるFWの強さとサイズがあり、スクラムも強く、気の利いたアタックが出来ることも見せつけて、夢のようなスタートを切ったかに思えた。

ところが、ここから第7節まで惜敗続きの5連敗(第3節は休み)を喫して、ハイレベルなスーパーラグビーの洗礼を受けた形だ。さらに4月15日の第8節もクライストチャーチのアウェー試合でクルセイダーズに敗れ(15-32)6連敗となった。このあと第9節の4月23日(土)には、いよいよ秩父宮でサンウルブズとニューフェース対決を迎える。

簡単にジャガーズの5連敗の内容を振り返っておくと、第2節は、南アの強豪シャークスに後半逆転負け(15ー19)。第3節の休みを挟んで、第4節は地元ブエノスアイレスに帰って、2万人近い大観衆の声援を受けるなか、ニュージーランドのチーフスを迎えた。試合は終盤、ジャガーズWTBのモローニのトライで一度は逆転しながら、チーフスのSHウェバーの逆転トライを許し、ホームの勝利は夢と消えた(26ー30)。第5節、地元のジャガーズはミスを連発し、南ア勢で最強のストーマーズに敗れた(8-13)。

第6節からジャガーズは、ニュージーランドでの3連戦に臨み、まずブルーズ相手に痛い敗戦を喫した(16ー24)。第7節、ジャガーズはハリケーンズに6トライを奪われ、大敗を喫した(22ー40)。それでもアタックではジャガーズらしさが戻った。NO8セナトーレのパワープレー、プレッシャーをかけたディフェンスが生んだ、CTBモロニのインターセプト・トライ、そして、押し込んだスクラム・サイドをSHランダホが突いたトライには彼らの持ち味が出ていた。

ここまでのジャガーズは、スクラムに関しては、思ったほど強くないため、攻撃機会が生かせず、リズムの乗れない感じだ。ただ、ハマれば強烈に押し込むこともある。そして、ランダホ、サンチェスのハーフ団はどんどん良くなっている。特にSHランダホは一皮むけて、好プレーを連発している。

残念なのは、BKの中心的存在のコルデーロが車のスリップ事故で負傷し第6節から欠場していることだ。彼が来日しない場合、CTBマティアス・モローニが、最も警戒すべきバックスとなる。

ここでジャガーズの注目すべき選手を数名紹介しておこう。

HOアグスティン・クレービー主将

31歳、182cm、106kg、セットプレーの中心選手。モールでも核となる。元々FLを兼任し、ボールを持ってのオフロードは一級品。フランスのモンペリエ、イングランドのウスターでも活躍。国代表デビューは(46キャップ)は2005年6月、ブエノスアイレスの日本戦、LOレギザモンと五郎丸もこの試合が初キャップ。2014年ザ・チャンピオンシップから代表チームのキャプテン。

LOトマス・ラバニーニ

23歳、200cm、118kg、ラインアウトの優れたキャッチー。ダイナミックな機動力と激しいタックルがウリの伸び盛りのタフなLO。2013年4月のウルグアイ戦で代表デビューし27キャップ。2013年からザ・チャンピオンシップにも出場、W杯2015では6試合に先発。

NO8レオナルド・セナトーレ

31歳、191cm、106kg、パワーと走力を兼ね備えたモダンなバックロー。W杯は2011と2015の2大会に出場。2013年10月、メンドーサでワラビーズを敗ったザ・チャンピオンシップ戦でトライ奪ったように勝負強い。フランスのトゥーロン、イングランドのウスターでもプレー。代表36キャップ。

SOニコラス・サンチェス

27歳、177cm、83kg、積極的なディフェンス同様に、アタックでも常に気味よく前進を図る。顔の表情も今は大人顔に変化し、それに連れてゲームの読みが進化した。正確なキックにも磨きがかかり、世界を代表するSOに成長。W杯2015の97得点は大会最多。2010年5月のウルグアイ戦デビュー以来、代表39キャップ、通算356得点。フランスのボルドー、トゥーロンでもプレー。

WTB/FBサンティアゴ・コルデーロ

22歳、176cm、79kg、働き場所はタッチ際、チェンジオブペースから鋭角ステップで再加速、自身で抜くも良し、ディフェンスの裏へのグラバーキックやパスを駆使して、トライを生み出すアルゼンチンの次のスター。2013年11月のイングランド戦に途中出場したデビュー戦は19歳。W杯ではジョージアから2トライ、トンガから1トライ。代表通算18キャップで6トライ。

FBホアキン・トゥクレット

26歳、184cm、86kg、安定したハイボールのキャッチと堅固なタックルで最後尾を守る。豪快なカウンターアタックがさらに魅力を増す。南ア、オーストラリア、アイルランド、スコットランドという強国からもトライを奪ってきた。2012年6月のイタリア戦に先発代表デビュー以来、通算28キャップ、8トライ。

アルゼンチン協会は、スーパーラグビーに出場する選手に対し、自国でプレーすることを定めたため、欧州クラブに所属する選手が、2014年には代表の90%いたものが、W杯2015では、32人のうち8人の25%に減少した。この8人はPRアジャルサとフィガージョ、LOガラーサ、FLフェルナンデス=ロベ、BKボッシュ、ソシーノ、アグージャ、イモフだ。彼らに加えて、オーストラリアのブランビーズと契約したSHクベリがジャガーズに参加しなかった。

ジャガーズのコーチ陣は、ヘッドコーチに代表チームでアシスタントコーチを務めるラウール・ペレスが就任し、アシスタントコーチに名司令塔だったフェリペ・コンテポーミと、加えて、昨年の若手代表パンパスXV(国の第3シニア代表)のコーチ陣を務めたホセ・ペリチェナとマルティン・ガイタンが加わっている。

アルゼンチンは国民の97%が欧州移民の子孫で構成され、そのうちスペイン系とイタリア系の比率が半々である。2メートル級のFWが次々と出現するのも、この国の人気スポーツであるバスケットボールが、アテネ五輪で金メダルを獲得し、NBA選手を何人も輩出している事実から不思議ではない。

アルゼンチンラグビーの特色といえば、まず思い浮かぶのがスクラムの強さだ。現代のスクラムの強さに直結する訳ではないが、背景には1960年代にブエノスアイレスのサン・イシドロ・クラブでDR・フランシスコ・オカンポが研究開発した"Bajada"(バハダ=低く)と呼ばれるスクラム理論が大きな支えとなってきた。バハダによって、70年代にはアルゼンチンのエイトマン・シャブ(8人の押し)が世界をリードした時代があった。その原理は8人が息を吸う瞬間を合わせて、全員同時に膝を折り、低く沈みこんだ瞬間に押し込む技術で、HOの両肩に8人の押しを槍のように集中させるのだという。そのままでは、現在の真っ直ぐフラットに押すことを求める規則とは相容れないものがある。

そして、バックスにも、細かくステップを踏むフェイントや切り返しといった、幼少時に身につけたサッカーのテクニックが、ディフェンスをかわす際に生かされている。さらに、アルゼンチンが生み出す好キッカーの伝統がある。古くはSOウーゴ・ポルタ、W杯では1999年のゴンサロ・ケサダと2015年のサンチェスの2人の得点王を生み出している。

さて、4週間の遠征から戻るサンウルブズに対して、ジャガーズは3週間のニュージーランド遠征を終えての来日である。この試合でも、鍵を握るのがスクラムだ。堀江主将のリードで、8人の息のそろった押しにつなげて欲しい。

ジャガーズは、サンウルブズがこれまでに対戦した相手と比べて、力任せのアタックよりも、人の間を抜くプレーを好む傾向がある。攻め方は多彩で、ディフェンスの際には、裏のスペースを狙って相手が蹴ってくるグラバーキックへの警戒が必要だ。サンウルブズには、安定感のあるピシのキックを生かして、接戦のまま最後の時間帯の勝負に持ち込み、勝利をつかみ取ってもらいたい。

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