Round4 レベルズ戦 マッチレビュー
スーパーラグビーで勝つことはそう簡単ではない。
そう思い知らされる敗戦だった。
3月19日、朝から雨が降りしきる悪天候の中で秩父宮ラグビー場に集った観衆は、16,444人。試合前、ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの大野均は言った。「見に来てくれたお客さんをがっかりさせないように、勝ちたい。80分間、集中力を保って戦いたい」。その言葉通り、午後1時15分のキックオフ直後から、サンウルブズの選手達は思い切りよくボールを動かし、開始4分にSOトゥシ・ピシが先制PGを決める。観客席では、サンウルブズの赤いタオルがくるくると振られた。
前半5分のファーストスクラムは、総体重で約40㎏劣るサンウルブズが安定感を披露し、確かなレベルアップを証明。その後は猛攻を受け、12分、レベルズのFLジョージ・リードにトライを奪われたが、サンウルブズもサインプレーからCTB立川理道が抜け出すなど観客を沸かせた。しかし、タックル後にすぐに退かない「ノット・ロール・アウェイ」の反則を繰り返し、26分、レベルズのSOジャック・デブレツェニに約40mのPGを決められる。すぐにサンウルブズもピシのPGで加点し、拮抗した展開で、6-11と5点のビハインドで前半を折り返した。
前半は6割以上ボールを支配された中で、WTB山田章仁の気の利いたプレーは光っていた。ディフェンスの人数が足りない時に、うまく相手との間合いを詰めてパスをさせなかったほか、味方選手が後ろでボールを蹴った際、レベルズの選手がキックチャージしたことで瞬時にオフサイドの解消を判断して、前に飛んできたボールにプレーするなど的確で冷静な動きでチャンスを作った。
チャンスが得点に結びつかないままの後半。
後半もサンウルブズは、ピシがPGを追加、攻撃ラインも思い切りよく前に出ながら攻め、ディフェンスラインを破ってはチャンスを作った。しかし、トライには至らず、9分、ディフェンスラインの乱れを突かれてトライを許し、9-18と突き放される。その後も、自分たちの攻撃時にスローフォワードなどのミスが出て、ディフェンスラインも、CTB立川理道が飛び出すも、次の選手が続かずにギャップができてしまうなど、連係ミスもあって失点。あっという間に引き離された。
目立ったのは、ゴール前まで攻め込んだときに、タックルされた後、ボールを奪われてしまうプレーだ。これについては、田邊淳BK・スキルコーチが、「0.5秒リアクションが遅かった」と解説。「レベルズはジャッカル(相手ボールを奪うプレー)が上手いチームです。それが分かっていたのに、リアクションが遅れたのは致命的でした」。また、ペナルティーの多さ(13、レベルズは7)、自陣からの脱出が上手くできていないことも敗因にあげた。
リアクションが遅れるのは、ボールを持つ人間が決まっていないからだという見方もある。「サンウルブズの良さは、みんなでアタック(攻撃)、みんなでディフェンスすることです。だからこそ、誰がボールを持つか分からないのでリアクションが大切になってくるのです」(田邊淳コーチ)。一人でタックラーを弾き飛ばしてトライするような選手がいないからこその全員アタックであり、互いのコミュニケーション、倒された選手の身のこなし、2人目の仕事の質、判断、リアクションの速さが生命線となる。ここは試合を重ねてレベルアップしていくしかないところだろう。
稲垣啓太は、「ペナルティーが多すぎました。スクラムも押せていたのに、全員がプレッシャーをかけようとしていたかと言えば、そうではない。駆け引きのコミュニケーションも磨いていきたい」と話し、まだチームが一枚岩にはなっていないことを感じさせた。しかし、ヘッドコーチ、選手の話は総じてポジティブだった。「得点には結びつきませんでしたが、アタックに関しては3試合で一番良かった。スクラムもステップアップしています。ラインアウトは修正が必要です。スーパーラグビーには振り返っている時間はありません。次戦に向かっていきます」(マーク・ハメットヘッドコーチ)。堀江翔太キャプテンも、「3試合勝てないと、チームの(士気が)下がってくるところですが、今は我慢するところ。ポジティブに修正していきたいです」と話した。
次戦は、3月26日、シンガポールで南アフリカの強豪ブルズとの対戦となる。
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