スーパーラグビー2019 ROUND 15 vs レベルズ text by 村上晃一
コラム5/26(日) 20:00
5月25日、夏のような日差しが照り付ける秩父宮ラグビー場には、13,636⼈の観衆が集った。ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズは、前節まで2勝10敗。プレーオフ進出は難しいが、今季初のホームでの勝利に向けて強度の高い練習をし、コンディションを整えて臨んだ。しかし、オーストラリアカンファレンス2位で、プレーオフ進出に負けられないレベルズは、3トライ以上引き離すボーナス点付きの勝利をあげようと、高い集中力でサンウルブズにプレッシャーをかけた。
午後2時15分、レベルズのキックオフで試合は始まった。立ち上がり早々、密集サイドをNO8アマナキ・レレイ・マフィが抜け出し、ビッグチャンスかと思われたが、ラックの最後尾ではなく、前にいてボールを持ち出したとしてオフサイドの反則を取られる。レベルズはタッチキックで地域を進めてラインアウトからアタックを仕掛けた。ここはサンウルブズが素早い出足でディフェンスし、WTBゲラード・ファンデンヒーファーがパスをインターセプト。攻撃に転じたが、タックルにあってボールを前に落としてしまう。その後のスクラムでは、サンウルブズが崩れる原因になったとしてコラプシングの反則をとられ、再びタッチキックから攻め込まれる。開始5分間で手痛い反則とミスが続き、先手を取ることができなかった。
サンウルブズはLOトンプソン ルークを筆頭に堅実なタックルを決め、ラインアウトからのモールも止め、ターンオーバーを勝ち取るなど懸命に失点を防いだ。しかし、13分、レベルズのFLアンガス・コットレルにトライを奪われると、16分にもSOクエイド・クーパーのパスでCTBリース・ホッジが抜け出し、最後はWTBマリカ・コロインベテが左コーナーにトライ。0-14とリードを広げられた。
前半18分、サンウルブズはHOネイサン・ベラが素早く間合いを詰めるタックルで相手のミスを誘い、流れをつかむ。直後のスクラムで反則を誘うと、PKからのタッチキックでレベルズ陣深く入り、ゴールライン直前まで攻め込んだ。ここで、レベルズのLOマット・フィリップが倒れた状態でサンウルブズの攻撃を止めたとしてシンビン(10分間の一時退場)となる。一人少なくなったレベルズに対して、サンウルブズはゴール前のラインアウトからモールを組んでトライを狙った。しかし、ここはレベルズのまとまったディフェンスでタッチライン方向に押し込まれ、BKにボールを展開したところでミスを犯し、チャンスを逸した。
その直後、ピンチが訪れる。前半28分、ゴールラインを背負い、レベルズのモールを食い止めたものの、BKへの展開の中、クーパーにフェイントからのロングパスを決められ、WTBコロインベテに再びトライを奪われる。「事前の分析でレベルズがモールを押してくると思っていたので」(PR山下裕史)と、モールに集中するあまり、止めた後のディフェンスで後手を踏んだ失トライだった。
「ファンタジスタ」とも呼ばれる天才的スキルを持つクーパーに余裕を持ってプレーされることも多かった。世界屈指のHB団であるSHウィル・ゲニア、クーパーの2人を自由にさせては、勝つことはできない。それは誰もが分かっているのだが、スクラムでも押し込まれ、ラインアウトの獲得率も低くなり、人数を揃えるのが精いっぱいのディフェンスも多かった。サンウルブズがやろうとしたことを、レベルズにされてしまった前半の40分だった。
スコアは、0-19。後半開始早々、昨年まで所属した古巣を相手にマフィがキックキャッチからのカウンターアタックで突進。タックルを一人かわすと、待ち受けるゲニアに向かってまっすぐ走った。スタンドが沸く。いったい何が起こるのか。緊張感あるシーンだった。オーストラリア代表100キャップを誇るゲニアは少し身をかわしながらマフィの足をつかんで倒す。さすがと思わせたが、不運にも後続の選手の足で頭部を強打し、脳震盪で退場となった。
この突進からサンウルブズに流れが傾く。攻勢に出たサンウルブズは、後半4分、FLラーボニ・ウォーレンボスアヤコがゴールラインに迫った。わずかにラインに届かず、さらに左オープンに展開したのだが、最後のパスがスローフォワードの判定で、またしてもトライチャンスを逃した。ただし、スローフォワードと判定されなくとも、レベルズのディフェンダーがタックルしており、トライが認められたかどうかは分からない。レベルズの最後まであきらめずに走る姿に、勝利にかける意気込みが感じ取れた。
その後もサンウルブズは、自陣からボールをキープして攻めようとしたが、ハンドリングエラーが多く、後半13、18分に連続トライを許す。サンウルブズ唯一のトライは後半23分、相手キックをチャージしたCTBジェイソン・エメリーがそのボールをインゴールに押さえたもの。連続攻撃では最後までディフェンスを崩せず、終盤に3トライを畳みかけられ、7-52で敗れた。「レベルズのプレッシャーによって、パスミスが多くなった」とゲームキャプテンを務めたFLダン・プライヤー。スクラム、ラインアウトで劣勢になったサンウルブズは、ブレイクダウン(ボール争奪局面)でもプレッシャーを浴び、各選手が余裕を持った判断ができないまま80分を過ごした。
「自分たちのゲームプランを信じ切れていなかった」とSH茂野海人。フラストレーションがたまる試合展開の中で、一人一人がなんとかしようと焦り、規律が乱れた面もあっただろう。今季のホームゲームは、6月1日に秩父宮ラグビー場で行われるブランビーズ戦を残すのみだ。スコット・ハンセンヘッドコーチ代行は言った。「ファンの皆さんの前で、良いプレーを見せたい。誇りを持ってもらえるようなパフォーマンスをしたい」。相手はオーストラリアカンファレンス首位のブランビーズ。手強い相手だが、今季最後のホームで観客席を笑顔にする戦いを期待したい。
午後2時15分、レベルズのキックオフで試合は始まった。立ち上がり早々、密集サイドをNO8アマナキ・レレイ・マフィが抜け出し、ビッグチャンスかと思われたが、ラックの最後尾ではなく、前にいてボールを持ち出したとしてオフサイドの反則を取られる。レベルズはタッチキックで地域を進めてラインアウトからアタックを仕掛けた。ここはサンウルブズが素早い出足でディフェンスし、WTBゲラード・ファンデンヒーファーがパスをインターセプト。攻撃に転じたが、タックルにあってボールを前に落としてしまう。その後のスクラムでは、サンウルブズが崩れる原因になったとしてコラプシングの反則をとられ、再びタッチキックから攻め込まれる。開始5分間で手痛い反則とミスが続き、先手を取ることができなかった。
サンウルブズはLOトンプソン ルークを筆頭に堅実なタックルを決め、ラインアウトからのモールも止め、ターンオーバーを勝ち取るなど懸命に失点を防いだ。しかし、13分、レベルズのFLアンガス・コットレルにトライを奪われると、16分にもSOクエイド・クーパーのパスでCTBリース・ホッジが抜け出し、最後はWTBマリカ・コロインベテが左コーナーにトライ。0-14とリードを広げられた。
前半18分、サンウルブズはHOネイサン・ベラが素早く間合いを詰めるタックルで相手のミスを誘い、流れをつかむ。直後のスクラムで反則を誘うと、PKからのタッチキックでレベルズ陣深く入り、ゴールライン直前まで攻め込んだ。ここで、レベルズのLOマット・フィリップが倒れた状態でサンウルブズの攻撃を止めたとしてシンビン(10分間の一時退場)となる。一人少なくなったレベルズに対して、サンウルブズはゴール前のラインアウトからモールを組んでトライを狙った。しかし、ここはレベルズのまとまったディフェンスでタッチライン方向に押し込まれ、BKにボールを展開したところでミスを犯し、チャンスを逸した。
その直後、ピンチが訪れる。前半28分、ゴールラインを背負い、レベルズのモールを食い止めたものの、BKへの展開の中、クーパーにフェイントからのロングパスを決められ、WTBコロインベテに再びトライを奪われる。「事前の分析でレベルズがモールを押してくると思っていたので」(PR山下裕史)と、モールに集中するあまり、止めた後のディフェンスで後手を踏んだ失トライだった。
「ファンタジスタ」とも呼ばれる天才的スキルを持つクーパーに余裕を持ってプレーされることも多かった。世界屈指のHB団であるSHウィル・ゲニア、クーパーの2人を自由にさせては、勝つことはできない。それは誰もが分かっているのだが、スクラムでも押し込まれ、ラインアウトの獲得率も低くなり、人数を揃えるのが精いっぱいのディフェンスも多かった。サンウルブズがやろうとしたことを、レベルズにされてしまった前半の40分だった。
スコアは、0-19。後半開始早々、昨年まで所属した古巣を相手にマフィがキックキャッチからのカウンターアタックで突進。タックルを一人かわすと、待ち受けるゲニアに向かってまっすぐ走った。スタンドが沸く。いったい何が起こるのか。緊張感あるシーンだった。オーストラリア代表100キャップを誇るゲニアは少し身をかわしながらマフィの足をつかんで倒す。さすがと思わせたが、不運にも後続の選手の足で頭部を強打し、脳震盪で退場となった。
この突進からサンウルブズに流れが傾く。攻勢に出たサンウルブズは、後半4分、FLラーボニ・ウォーレンボスアヤコがゴールラインに迫った。わずかにラインに届かず、さらに左オープンに展開したのだが、最後のパスがスローフォワードの判定で、またしてもトライチャンスを逃した。ただし、スローフォワードと判定されなくとも、レベルズのディフェンダーがタックルしており、トライが認められたかどうかは分からない。レベルズの最後まであきらめずに走る姿に、勝利にかける意気込みが感じ取れた。
その後もサンウルブズは、自陣からボールをキープして攻めようとしたが、ハンドリングエラーが多く、後半13、18分に連続トライを許す。サンウルブズ唯一のトライは後半23分、相手キックをチャージしたCTBジェイソン・エメリーがそのボールをインゴールに押さえたもの。連続攻撃では最後までディフェンスを崩せず、終盤に3トライを畳みかけられ、7-52で敗れた。「レベルズのプレッシャーによって、パスミスが多くなった」とゲームキャプテンを務めたFLダン・プライヤー。スクラム、ラインアウトで劣勢になったサンウルブズは、ブレイクダウン(ボール争奪局面)でもプレッシャーを浴び、各選手が余裕を持った判断ができないまま80分を過ごした。
「自分たちのゲームプランを信じ切れていなかった」とSH茂野海人。フラストレーションがたまる試合展開の中で、一人一人がなんとかしようと焦り、規律が乱れた面もあっただろう。今季のホームゲームは、6月1日に秩父宮ラグビー場で行われるブランビーズ戦を残すのみだ。スコット・ハンセンヘッドコーチ代行は言った。「ファンの皆さんの前で、良いプレーを見せたい。誇りを持ってもらえるようなパフォーマンスをしたい」。相手はオーストラリアカンファレンス首位のブランビーズ。手強い相手だが、今季最後のホームで観客席を笑顔にする戦いを期待したい。