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<マッチレビュー>
スーパーラグビー2019 ROUND 6 vs ライオンズ text by 村上晃一

チーム3/24(日) 15:12
勝利に手が届きそうなのにつかめない。もどかしい戦いが続くヒト・コミュニケーション サンウルブズは、3月23日、シンガポール・ナショナルスタジアムで南アフリカカンファレンスのライオンズと戦い、健闘むなしく24-37(前半7-12)で敗れた。
 
現地時間午後6時55分、ライオンズSOエルトン・ヤンチースのキックオフで試合は始まった。これをキャッチしたサンウルブズは、NO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコが突進。SOヘイデン・パーカーが右タッチライン際にハイパントを蹴り上げる。これをWTBゲラード・ファンデンヒーファーがキャッチして約60mを走る。ライオンズの俊足WTBコートナル・スコーサンに追いつかれてトライを逃したが、チームを勢いづけるプレーだった。その後も、サンウルブズはラインアウトでHO坂手淳史がロングスロー、CTB立川理道がダイレクトでキャッチして突進するなど先手をとって仕掛けた。

 前半6分、サンウルブズが連続攻撃でディフェンスを揺さぶると、トライへのラストパスをライオンズWTBシルヴィアン・マフーザがはたき落とす反則を犯す。マフーザはシンビン(10分間の一時退場)となり、サンウルブズにペナルティートライ(自動的に7点)が与えられた。続くキックオフからのリターンも、パーカーがファンデンヒーファーにキックパスを送ったが、これがノックオンとなり、ライオンズボールのスクラムとなる。このスクラムで反則を取られると、PKからのタッチキックで自陣ゴール前に追い込まれる。

しかし、ここはラインアウトからのモールを止め、なんとかトライを防いだ。直後のライオンズボールのスクラムも、PR三上正貴、HO坂手淳史、PR具智元が相手より先に低い姿勢を取って土台となり押されなかった。以降、ライオンズはPKからはスクラムを選択せず、タッチキックからラインアウトで攻めるようになる。

ラインアウトからのモールも再三食い止めたのだが、13分、ついにHOマルコム・マークスにトライを奪われ、7-7の同点にされた。直後に攻め込んだサンウルブズだったが、ゴールラインに迫ったところで孤立したWTBセミシ・マシレワからマークスがボールを奪う。35分にも、マークスはモールから2つ目のトライを決め、抜群の存在感を示した。

前半を終えて、7-12のスコアは十分に勝利の可能性を感じさせたし、両PR、CTB立川理道、FB山中亮平らラグビーワールドカップトレーニングスコッドからの合流組がよく働いた。特にFBの山中は、キック処理、ボールキャリーにと安定感あるパフォーマンスだった。「彼らにとっては今季初めての試合となりましたが、先発で出た立川と山中はよかったと思いますし、フロントローも悪くなかったと思います」(トニー・ブラウンヘッドコーチ)。

後半開始早々、サンウルブズはSOヘイデン・パーカーが40m以上のPGを決めて10-12とする。しかし、12分、スクラムをまっすぐ組まないという「アングル」のペナルティーを犯すと、ゴールラインを背負ってライオンズボールのラインアウトと与えてしまい、モールからSHニック・グルームにトライを奪われた。この後、SH田中史朗はじめ、交代選手を次々に投入したサンウルブズだが、14分にマシレワがキックした相手へのレイトチャージ(蹴り終わった相手へのタックル)でペナルティーを受け、自陣にくぎ付けになる。

17分、ヤンチース、21分、CTBライオネル・マプーに連続トライを許し、10-29とされてほぼ勝敗は決した。マプーのトライは、BK陣のコミュニケーションミスで、立川が飛び出してしまったもの。クリーンにディフェンスラインを突破されたのは、この試合で初めてだった。その後は自陣からも思い切って攻め、交代出場のアマナキ・レレイ・マフィの突進からラーボニ・ウォーレンボスアヤコがトライするなど追い上げたが届かなかった。

前半はスクラムも安定し、多彩な攻撃でチャンスを作っていただけに悔やまれる敗戦だった。スクラムについて、HO坂手淳史は「試合中にライオンズの組み方も少しずつ理解してきたので、相手の嫌なところを攻めるスクラムを出せるようになったと思います」と、ある程度対応できたと語った。一方で、PR具智元はこう話す。「ライオンズは一人一人のヒットが強く、マルコム・マークスはスクラムを浮かせてきて、対応するのが大変でした。今日はいいスクラムもあったが悪いところも多かった。スクラムでもペナルティーが多く、8人で組めていなかったところもある。もっとしっかり8人で組めるようにしたい」

ペナルティー数は、ライオンズの6に対して、サンウルブズは12。レイトチャージなど気を付ければ減らせる反則もあり、規律の乱れは厳しく戒めて改善してもらいたい。課題のラインアウトの獲得率は、ライオンズの100%に対して、サンウルブズは7本中2本を失った。今季初先発のLOグラント・ハッティングは「メンバーが変わってコンビネーションが難しい面があった」と話したが、引き続き修正すべきポイントだろう。

ライオンズのスワイス・デブラインヘッドコーチは「プラン通りだった」と話した。この日は、ワーレン・ホワイトリー、クワッガ・スミス、カイル・ブリンクらFW第三列に負傷が多く、本来はFW第二列の選手を三列で起用していた。ラインアウトを軸にしてFWを前に出すことが勝利には不可欠だったのだ。終わってみればそのプランを崩すことができなかったことになる。山中亮平は言った。「全体的にペナルティーが多かったです。ブレイクダウンまわり、オフサイド、規律の部分が疲れてくると守れなかったです」。次節(ワラターズ戦)こそ、規律正しく戦い、今季2勝目をあげてほしい。
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