<マッチレビュー>
スーパーラグビー2019 ROUND 5 vs レッズ text by 村上晃一
コラム3/17(日) 15:57
ノーサイドの瞬間、これまでの惜敗とは違った脱力感におそわれた人が多かったのではないか。前半は観客席を埋めた14,764⼈の観衆の期待に応え、スピーディーな連続攻撃から3トライをあげながら、後半は失速。勝利をつかみとることができなかった。一つ一つの反則やミスが悔やまれる敗戦だった。逆に言えば、今季のレベルアップを皆が感じているからこその感情だろう。客席に笑顔を運ぶ好プレーも多かった。ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの80分を振り返っておこう。
3月16日、試合前のピッチでは、両チームがひとつの円陣になり、ニュージーランド南島クライストチャーチで起きた銃乱射事件の被害者に対する黙祷が捧げられた。午後1時15分、サンウルブズSOヘイデン・パーカーのキックオフで試合は始まった。レッズはフィジカル面で優位に立とうと、一人一人のボールキャリアーが激しく前に出ながら連続攻撃を仕掛けてきた。これを前に出るタックルで押し戻したサンウルブズは、前半12分、SHジェイミー・ブースが先制トライをあげる。CTBマイケル・リトルがハーフウェーライン付近からバックスタンド側のディフェンスを突破し、この日が先発デビューとなったFLダン・プライヤーがサポート、ブースにつないだものだ。
16分、サンウルズは、スクラムで2度目のアーリーエンゲージ(レフリーの合図より先に組む反則)を取られ、PKからのタッチキックで自陣22mライン付近にボールを運ばれ、相手ボールのラインアウトとなる。ここからレッズが得意とするモールを押し込まれてトライを奪われた(スコアは、7-5)。約20mを押し切られたドライビングモールは、その後も、サンウルブズを苦しめた。
23分、レッズのキックを受けてのカウンターアタックからNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコがトライし、14-5としたサンウルブズは、その後も再三チャンスを作って相手ゴールラインに迫るが、トライが取り切れない。これが後々響くことになる。ようやく追加点をあげたのは、37分のことだ。バックスタンド側のタッチライン際をWTBホセア・サウマキが抜け出し、FBジェイソン・エメリー、FLダン・プライヤーが素早くパスを交換してトライ。胸のすくパス回しにスタジアムは大いに盛り上がった。
21-5とリードして前半を終了。ボール保持時間ではレッズが55%で、サンウルブズを上回ったが、相手陣にいる時間はサンウルブズが61%。レッズが自陣からの攻撃で前に出られない時間を多く作ったということだ。前半に関してはサンウルブズの前に出るディフェンスが機能していた。サンウルブズにとって痛かったのは、前半終了直前にパワフルなタックル、ボールキャリーで活躍していたPRパウリアシ・マヌが負傷退場したことだ。これによって、スクラムやブレイクダウンでの攻防に少なからぬ影響が出た。
後半3分、レッズボールのスクラムでペナルティーを犯すと、ラインアウトからのモールを押し込まれ、ここでも反則を犯し、再びタッチキックで自陣ゴールラインにくぎ付けになる。「ここ数週間、スクラム、ラインアウトは重点的に練習していました」。試合前にそう話していたのは、レッズのサム・ケレヴィキャプテンだ。準備した強みを発揮して、レッズは流れをつかんだのである。
それでもサンウルブズは粘りのディフェンスでトライを防いだ。勝敗を分けたのは、後半10分過ぎからの攻防だろう。レッズFBハミッシュ・スチュワートのキックミスで、レッズ陣深くのラインアウトを得ながら、スローイングがまっすぐ入らず、ノットストレートの反則をとられる。この後のスクラムで反則を犯し、タッチキックを与え、自陣に攻め込まれた。もっとも悔やまれるのは、この次だ。レッズボールのラインアウトをスチールし、逆襲に転じたところで、CTBシオネ・テアウパがノックオン。レッズボールのスクラムを与えてしまう。このスクラムでも反則を取られると、攻め込まれてゴールラインを明け渡した。これで21-12とされると、サンウルブズのディフェンスが乱れ、22分、26分と連続トライを奪われ、21-26とひっくり返された。何度も流れを取り戻すチャンスを得ながら、それを生かせない、もどかしい時間帯だった。
防戦一方のサンウルブズだが、29分、交代出場のFLアマナキ・レレイ・マフィの突進でゴールラインに迫ると、SH内田啓介がトライし、再び28-26と逆転。33分にはパーカーがPGを追加して、31-26とする。しかし、もしラインアウトが安定していたら、タッチキックでゴール前のラインアウトを得てトライを取る選択をしたかもしれない。そうなればスコアは、35-26になっていた。セットプレーの不安定さは攻撃の選択にも影響したということだろう。
5点差としたサンウルブズだが、自陣からの内田のキックがチャージされ、手痛い同点トライを奪われる。後半に関しては、良いプレーが連続しなかった。その後、相手陣深くにキックオフを蹴り込みながら、簡単にゲインされてしまう。タックルの精度は明らかに落ちていた。最後は自陣でのディフェンス中に反則を犯して決勝PGを決められた。
スコット・ハンセンヘッドコーチ代行は、記者会見で勝ちきれないチーム状況について、次のようにコメントした。「選手たちが頑張っているのは見て分かる通りです。しかし、頑張りすぎて、入らなくて良いラックに入り疲れてしまっている。もっと頭を使って賢くプレーする必要があります。15人でプレーすれば良い結果が出ると思います」
その言葉が敗因の多くを語っていた。前半のトライチャンスも、ゴール前で一人一人がトライを取り急いで孤立し、パスを出せば良いところで無理をする場面があった。ブレイクダウン(ボール争奪戦)でも必要以上にファイトし過ぎていたきらいがある。このあたりを的確に見極めてプレーすることで接戦がものにできるようになる、ということだろう。
ヘイデン・パーカーはこの日も5本のプレースキックをすべて成功させ、依然として100%のプレースキック成功率を続けている。スーパーラグビーデビューのベン・ガンターは、パワフルなタックルで何度も相手を押し返した。初先発のダン・プライヤーはチームNO.1の14タックルに1トライ。NO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコは、両チーム最多の18回のボールキャリーで、69mをゲインし、1トライをあげた。次節こそ、個々の好パフォーマンスを勝利につなげてもらいたい。
3月16日、試合前のピッチでは、両チームがひとつの円陣になり、ニュージーランド南島クライストチャーチで起きた銃乱射事件の被害者に対する黙祷が捧げられた。午後1時15分、サンウルブズSOヘイデン・パーカーのキックオフで試合は始まった。レッズはフィジカル面で優位に立とうと、一人一人のボールキャリアーが激しく前に出ながら連続攻撃を仕掛けてきた。これを前に出るタックルで押し戻したサンウルブズは、前半12分、SHジェイミー・ブースが先制トライをあげる。CTBマイケル・リトルがハーフウェーライン付近からバックスタンド側のディフェンスを突破し、この日が先発デビューとなったFLダン・プライヤーがサポート、ブースにつないだものだ。
16分、サンウルズは、スクラムで2度目のアーリーエンゲージ(レフリーの合図より先に組む反則)を取られ、PKからのタッチキックで自陣22mライン付近にボールを運ばれ、相手ボールのラインアウトとなる。ここからレッズが得意とするモールを押し込まれてトライを奪われた(スコアは、7-5)。約20mを押し切られたドライビングモールは、その後も、サンウルブズを苦しめた。
23分、レッズのキックを受けてのカウンターアタックからNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコがトライし、14-5としたサンウルブズは、その後も再三チャンスを作って相手ゴールラインに迫るが、トライが取り切れない。これが後々響くことになる。ようやく追加点をあげたのは、37分のことだ。バックスタンド側のタッチライン際をWTBホセア・サウマキが抜け出し、FBジェイソン・エメリー、FLダン・プライヤーが素早くパスを交換してトライ。胸のすくパス回しにスタジアムは大いに盛り上がった。
21-5とリードして前半を終了。ボール保持時間ではレッズが55%で、サンウルブズを上回ったが、相手陣にいる時間はサンウルブズが61%。レッズが自陣からの攻撃で前に出られない時間を多く作ったということだ。前半に関してはサンウルブズの前に出るディフェンスが機能していた。サンウルブズにとって痛かったのは、前半終了直前にパワフルなタックル、ボールキャリーで活躍していたPRパウリアシ・マヌが負傷退場したことだ。これによって、スクラムやブレイクダウンでの攻防に少なからぬ影響が出た。
後半3分、レッズボールのスクラムでペナルティーを犯すと、ラインアウトからのモールを押し込まれ、ここでも反則を犯し、再びタッチキックで自陣ゴールラインにくぎ付けになる。「ここ数週間、スクラム、ラインアウトは重点的に練習していました」。試合前にそう話していたのは、レッズのサム・ケレヴィキャプテンだ。準備した強みを発揮して、レッズは流れをつかんだのである。
それでもサンウルブズは粘りのディフェンスでトライを防いだ。勝敗を分けたのは、後半10分過ぎからの攻防だろう。レッズFBハミッシュ・スチュワートのキックミスで、レッズ陣深くのラインアウトを得ながら、スローイングがまっすぐ入らず、ノットストレートの反則をとられる。この後のスクラムで反則を犯し、タッチキックを与え、自陣に攻め込まれた。もっとも悔やまれるのは、この次だ。レッズボールのラインアウトをスチールし、逆襲に転じたところで、CTBシオネ・テアウパがノックオン。レッズボールのスクラムを与えてしまう。このスクラムでも反則を取られると、攻め込まれてゴールラインを明け渡した。これで21-12とされると、サンウルブズのディフェンスが乱れ、22分、26分と連続トライを奪われ、21-26とひっくり返された。何度も流れを取り戻すチャンスを得ながら、それを生かせない、もどかしい時間帯だった。
防戦一方のサンウルブズだが、29分、交代出場のFLアマナキ・レレイ・マフィの突進でゴールラインに迫ると、SH内田啓介がトライし、再び28-26と逆転。33分にはパーカーがPGを追加して、31-26とする。しかし、もしラインアウトが安定していたら、タッチキックでゴール前のラインアウトを得てトライを取る選択をしたかもしれない。そうなればスコアは、35-26になっていた。セットプレーの不安定さは攻撃の選択にも影響したということだろう。
5点差としたサンウルブズだが、自陣からの内田のキックがチャージされ、手痛い同点トライを奪われる。後半に関しては、良いプレーが連続しなかった。その後、相手陣深くにキックオフを蹴り込みながら、簡単にゲインされてしまう。タックルの精度は明らかに落ちていた。最後は自陣でのディフェンス中に反則を犯して決勝PGを決められた。
スコット・ハンセンヘッドコーチ代行は、記者会見で勝ちきれないチーム状況について、次のようにコメントした。「選手たちが頑張っているのは見て分かる通りです。しかし、頑張りすぎて、入らなくて良いラックに入り疲れてしまっている。もっと頭を使って賢くプレーする必要があります。15人でプレーすれば良い結果が出ると思います」
その言葉が敗因の多くを語っていた。前半のトライチャンスも、ゴール前で一人一人がトライを取り急いで孤立し、パスを出せば良いところで無理をする場面があった。ブレイクダウン(ボール争奪戦)でも必要以上にファイトし過ぎていたきらいがある。このあたりを的確に見極めてプレーすることで接戦がものにできるようになる、ということだろう。
ヘイデン・パーカーはこの日も5本のプレースキックをすべて成功させ、依然として100%のプレースキック成功率を続けている。スーパーラグビーデビューのベン・ガンターは、パワフルなタックルで何度も相手を押し返した。初先発のダン・プライヤーはチームNO.1の14タックルに1トライ。NO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコは、両チーム最多の18回のボールキャリーで、69mをゲインし、1トライをあげた。次節こそ、個々の好パフォーマンスを勝利につなげてもらいたい。