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<マッチレビュー>
スーパーラグビー2019 ROUND2 vsワラターズ text by 村上晃一

コラム2/24(日) 12:00
シンガポールでの完敗から一週間後の2月23日、サンウルブズがオーストラリア代表選手を多数そろえるワラターズを迎え撃った。キャプテンのFLマイケル・フーパ―、FBイズラエル・フォラウをはじめ、世界のビッグネームが並ぶメンバーに危機感を持った皆さんも多かったはずだが、期待以上のサンウルブズの奮闘に秩父宮ラグビー場に集った、1万4499人の観衆は大いに沸いた。

午後1時15分、試合はワタラーズSOバーナード・フォーリーのキックオフで始まった。開始1分、先週のシャークス戦では圧力を受けたスクラムの機会が訪れる。サンウルブズは先発PR山下裕史を軸に8人がまとまって綺麗な姿勢のスクラムを組んだ。8分、自陣で防戦一方に追い込まれていたサンウルブズは、CTB中村亮土が相手のパスをインターセプトして約60mの独走、サポートしたSOヘイデン・パーカーにパスをするかに見えたが、これをオトリにして、後ろから駆け上がってきたWTBゲラード・ファンデンヒーファーにパス。ファンデンヒーファーが右中間にトライをあげた。パーカーのゴールも決まって、7-0とリードする。

しかし、直後のキックオフからの攻めがまずかった。自陣からボールを動かし、CTBシェーン・ゲイツが防御背後へ短いキックをあげたが、これがワラターズCTBカートリー・ビールの腕にすっぽり収まってトライを奪われる。これでスコアは7-7。嫌な空気が流れた。しかし、この日のサンウルブズには力強い武器があった。前半14分、自陣ゴールラインを背負ったサンウルブズがペナルティーを犯し、ワラターズがスクラムを選択する。ここでサンウルブズが猛プッシュ。ワラターズの反則を誘ったのだ。盛り上がるサンウルブズサポーター。これに機に攻め込んだサンウルブズは、パーカーがPGを決めて、10-7とリード。勝利への期待感が高まった。

しかし、ワラターズも一歩も引かず、互いに攻めてはターンオーバーという攻防が続く。ワラターズに2つのトライを奪われ、13-17と4点差を追う前半38分、連蔵攻撃を仕掛けたサンウルブズは、CTB中村のパスを受けたLOトム・ロウが逆転のトライをあげ、パーカーのゴールも決まって、20-17と再逆転。前半をリードで折り返し、観客席には歓喜の笑顔が広がった。スクラムで押し勝ち、もう一つの課題だったディフェンスでも、タックル成功率81%と、ワラターズの72%を大きく上回った。

後半3分、サンウルブズがパーカーのPGで23-17とリードを広げると、ワラターズもFLネド・ハニガンがトライを返し、23-24とスコアをひっくり返す。ここで、サンウルブズは、怪我のPRクレイグ・ミラーに代わって、スーパーラグビーで82キャップ(ブルーズ、チーフス)を持つパウリアシ・マヌ、HO坂手淳史、LOヘル ウヴェらフレッシュな選手次々に投入する。彼らは、鋭いタックル、パワフルな突進で期待に応えた。しかし、後半22分、ゴール前のラインアウトからモールを押し込まれた際、反則を繰り返し、ペナルティートライを奪われたうえ、LOトンプソン ルークがシンビン(10分間の一時退場)となってしまう。

14人での戦いを強いられたサンウルブズだが、チーム一丸となって粘り、70分、ようやく相手陣中盤の左中間でスクラムを得る。7人のスクラムでボールを出し、サインプレーを仕掛けると、WTBファンデンヒーファーが抜け出す。これは、2015年のラグビーワールドカップで、日本代表の五郎丸歩が南アフリカ代表からトライを奪ったのと同じサインプレーだった。抜け出したファンデンヒーファーは、さらにシフトアップ。ワラターズの守護神であるフォラウのタックルもかわして胸のすくトライをあげる。パーカーのゴールも決まり、30-31と1点差。観客席のボルテージは最高潮に達した。

終盤、この試合最大の見せ場がやって来る。ファンデンヒーファーが右コーナーに迫り、今度はNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコが左コーナーへ。チャンスのたびに悲鳴にも似た歓声が上がる。そして、残り2分、サンウルブズがラインアウトから連続攻撃を仕掛け、ゴールポストを正面にしたラックからボールが出ると、パーカーがドロップゴールの体勢に入った。成功すれば3点獲得で逆転だ。誰もが劇的勝利を思い描いただろう。しかし、ワラターズのCTBカーマイケル・ハントが猛然とチャージに飛び出し、このプレッシャーでパーカーの体勢が崩れた。ふらふらと舞い上がったボールはゴールを外れ、数プレー後、ノーサイドのホイッスルが鳴った。

共同キャプテンのマイケル・リトルは言った。「勝ちたかったけれど、仲間の頑張りは嬉しかった。誇りに思います。特にディフェンスが良くなりました」。敗れたワラターズのマイケル・フーパ―はほっとした表情でコメントした。「サンウルブズは良いプレーをしました。そのプレッシャーをはねのけられて良かったです」。

サンウルブズのボール保持率は37%。6割方ボールを支配されながら、137回のタックルを決めて粘った。初戦では何度も破られたタッチライン際も、内側からのバッキングアップのタックラーを待ちながら慎重に守った。前節の反則数16から、今回は9。相手ボールのスクラムも前節の14から6に減り、不用意な反則、ミスが少なかったことを数字も裏付けた。大活躍の中村亮土は「チーム一丸となって良いディフェンスができました。オフロードパスからの(ロウの)トライは練習でやってきたことです」と語った。

ワラターズからの初勝利という千載一遇のチャンスを逃したが、一週間で課題を大幅に修正し、今後の戦いに期待を膨らませた点で価値のある戦いだった。
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