野澤武史さんが試合STATSをゴリ解説!
応用編~スタッツデータで試合分析
コラム6/28(水) 12:05
日本ラグビーフットボール協会リソースコーチで、テレビのラグビー解説でもお馴染みの野澤武史さんに教えていただく「試合STATSをゴリ解説」、いよいよ最後の応用編です!
・基本編①~TEAM & PLAYER STATS~
・基本編②~ACTION AREAS & CHALKBOARDほか~
(聞き手・文:村上晃一)
ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ STATSページ
「試合日程・結果」>各試合の「試合詳細」>「速報/STATS」
「基本編①」で、タックル成功率を計算してみることをオススメしましたが、実はタックル成功率は簡単に抜かれてばかりいるとあまり下がらないのです。逆に、粘り強くディフェンスするチームはタックル成功率が低くなることがあります。強かった時期のクルセイダーズは80%強でした。僕がヘッドコーチをしていた時の慶應大が、早稲田大に大敗したことがありましたが、その試合のタックル成功率は85%を超えていました。きれいに抜かれているからです。自分が行ける範囲しかタックルしない選手も、タックル成功率は上がります。タックル成功率が低い選手は、火中の栗を拾っている、ということもあります。
タックル成功率は自分で計算しないといけませんが、率と量の両面からデータを追うことで、より正確な推測が可能になります。
数字だけでは選手の評価はできません。内容をよく見て、違和感のある時に数字を見る。すると気づくことがある、ということだと思います。
27-20で敗れたROUND10 チーフス戦スタッツを見てみましょう。
サンウルブズは善戦したと思います。それは、チーフスの「ゲインメータ」にも表れていて、いつもは長い距離を走るチーフスの数値を、412mに抑えています。これは、チーフスをカウンターアタックがしにくい状況に追い込んでいたことを示しています。
数試合をストーリーで見るのも、おもしろい見方ですよ。
たとえば、4月のニュージーランド遠征での3連戦。
<ROUND8 クルセイダーズ戦 ●50-3>
STATSはこちら
「TEAM STATS>キック」を見ると、サンウルブズの「インプレーキック」は23で、クルセイダーズの20より多くなっています。
「ACTION AREAS」で見る「支配率」ではサンウルブズが34%。
「TEAM STATS>守備」の「タックル」の数は、サンウルブズの161に対してクルセイダーズは61です。
『アンストラクチャを作り出す』というサンウルブズのコンセプトは、アタック能力の高いニュージーランド勢には劣勢を招く結果となりました。
<ROUND9 ハイランダーズ戦 ●40-15>
STATSはこちら
「TEAM STATS>守備」の「タックル」の数を見るとサンウルブズは100。相手のハイランダーズの147よりはるかに少なく、ボール支配率は59%です。
「TEAM STATS>キック」を見ると、サンウルブズの「インプレーキック」は16で、ハイランダーズのキック数15とほぼ互角となっています。
ハイランダーズのタックル回数がサンウルブズより多いということは、サンウルブズのアタック時間が伸びたことを語っています。また、今シーズンのサンウルブズのROUND8 クルセイダーズ戦までの「パス:キック比」は6.4(キック1本に対してパスを6.4回行う)となっているのですが、ROUND9 ハイランダーズ戦に限っては「219:16」で13.7と平均の2倍強の数値をたたき出しています。
つまり、STATSから見ても、サンウルブズはクルセイダーズ戦を契機になんらかの戦略変更を行った…ということがうかがえます。クルセイダーズ戦の大敗をハイランダーズ戦で生かし、それが遠征最後のROUND10 チーフス戦ではスコア(●27-20)にも表れた、という見方ができるのです。
「戦略とは戦いを省くこと」と言われますが、まさにサンウルブズは4月のニュージーランド遠征で敗戦から学び、自らが戦う場所を限定することにより、ファンをワクワクさせる試合をしてくれたのだと私は思います。データから、そのチームの魂の叫び声が聞こえたら、あなたももうマニアック!ぜひ、たくさん妄想してみて下ください。正解はないのですから…。
7/15(土)@秩父宮 ブルーズ戦
スタッツは、スーパーラグビー公式サイトでも見ることができます。
●ブルーズのスタッツ
ブルーズは、ものすごく攻撃的なチームという印象がありますが、攻撃面の数字を見るとスーパーラグビーの平均的なチームです。一方で、タックル成功率は平均よりも高い。ニュージーランドカンファレンスにいながら、その数字を保っているという点も注目です。スクラムは苦戦していますね。
ブルーズがいい試合をしてるときの目安は、以下の2つ。
・ゲインメータ490m以上
・ディフェンス突破数24以上
これを上回られると、サンウルブズは敗戦の可能性が高くなりそうです。つまり、ブルーズが意図する攻撃をさせないことが、サンウルブズ勝利への必須条件と言えるでしょう。
ブルーズ戦はぜひ、サンウルブズ公式サイトのスタッツをチェックしながら観戦してみてください!
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・基本編①~TEAM & PLAYER STATS~
・基本編②~ACTION AREAS & CHALKBOARDほか~
(聞き手・文:村上晃一)
ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ STATSページ
「試合日程・結果」>各試合の「試合詳細」>「速報/STATS」
野澤さん的スタッツの楽しみ方
サンウルブズ公式サイトには、サンウルブズと対戦チームのスタッツが出ていますので、今回は両チームのスタッツを使って試合を分析する見方について、お教えします。
タックル成功率
「TEAM STATS>攻撃」の、相手チームの「ゲインメータ」と「クリーンブレイク」の数は、サンウルブズのディフェンス能力を表しています。「TEAM STATS>守備」の「タックル」の数と一緒に見ておくとおもしろいです。「基本編①」で、タックル成功率を計算してみることをオススメしましたが、実はタックル成功率は簡単に抜かれてばかりいるとあまり下がらないのです。逆に、粘り強くディフェンスするチームはタックル成功率が低くなることがあります。強かった時期のクルセイダーズは80%強でした。僕がヘッドコーチをしていた時の慶應大が、早稲田大に大敗したことがありましたが、その試合のタックル成功率は85%を超えていました。きれいに抜かれているからです。自分が行ける範囲しかタックルしない選手も、タックル成功率は上がります。タックル成功率が低い選手は、火中の栗を拾っている、ということもあります。
タックル成功率は自分で計算しないといけませんが、率と量の両面からデータを追うことで、より正確な推測が可能になります。
ゲインメータ
ボールを持って進んだ距離を示す「ゲインメータ」が500mを超えてくるチームは、キックに対してカウンターアタックを仕掛けてくるチームです。400mくらいのチームは、すぐに蹴り返して、あまり走ってこないと見ることができます。そのチームが自陣22mからハーフウェイのエリアを、どのようなポリシーを持って組み立てているかが、ゲインメータから推測できます。数字だけでは選手の評価はできません。内容をよく見て、違和感のある時に数字を見る。すると気づくことがある、ということだと思います。
相手チームのスタッツをチェック
相手チームのスタッツに目を向けることも、一歩踏み込んだ分析には欠かせません。27-20で敗れたROUND10 チーフス戦スタッツを見てみましょう。
サンウルブズは善戦したと思います。それは、チーフスの「ゲインメータ」にも表れていて、いつもは長い距離を走るチーフスの数値を、412mに抑えています。これは、チーフスをカウンターアタックがしにくい状況に追い込んでいたことを示しています。
数試合をストーリーで見るのも、おもしろい見方ですよ。
たとえば、4月のニュージーランド遠征での3連戦。
<ROUND8 クルセイダーズ戦 ●50-3>
STATSはこちら
「TEAM STATS>キック」を見ると、サンウルブズの「インプレーキック」は23で、クルセイダーズの20より多くなっています。
「ACTION AREAS」で見る「支配率」ではサンウルブズが34%。
「TEAM STATS>守備」の「タックル」の数は、サンウルブズの161に対してクルセイダーズは61です。
『アンストラクチャを作り出す』というサンウルブズのコンセプトは、アタック能力の高いニュージーランド勢には劣勢を招く結果となりました。
<ROUND9 ハイランダーズ戦 ●40-15>
STATSはこちら
「TEAM STATS>守備」の「タックル」の数を見るとサンウルブズは100。相手のハイランダーズの147よりはるかに少なく、ボール支配率は59%です。
「TEAM STATS>キック」を見ると、サンウルブズの「インプレーキック」は16で、ハイランダーズのキック数15とほぼ互角となっています。
ハイランダーズのタックル回数がサンウルブズより多いということは、サンウルブズのアタック時間が伸びたことを語っています。また、今シーズンのサンウルブズのROUND8 クルセイダーズ戦までの「パス:キック比」は6.4(キック1本に対してパスを6.4回行う)となっているのですが、ROUND9 ハイランダーズ戦に限っては「219:16」で13.7と平均の2倍強の数値をたたき出しています。
つまり、STATSから見ても、サンウルブズはクルセイダーズ戦を契機になんらかの戦略変更を行った…ということがうかがえます。クルセイダーズ戦の大敗をハイランダーズ戦で生かし、それが遠征最後のROUND10 チーフス戦ではスコア(●27-20)にも表れた、という見方ができるのです。
「戦略とは戦いを省くこと」と言われますが、まさにサンウルブズは4月のニュージーランド遠征で敗戦から学び、自らが戦う場所を限定することにより、ファンをワクワクさせる試合をしてくれたのだと私は思います。データから、そのチームの魂の叫び声が聞こえたら、あなたももうマニアック!ぜひ、たくさん妄想してみて下ください。正解はないのですから…。
7/15(土)@秩父宮 ブルーズ戦
このスタッツをチェックせよ!
スタッツは、スーパーラグビー公式サイトでも見ることができます。●ブルーズのスタッツ
ブルーズは、ものすごく攻撃的なチームという印象がありますが、攻撃面の数字を見るとスーパーラグビーの平均的なチームです。一方で、タックル成功率は平均よりも高い。ニュージーランドカンファレンスにいながら、その数字を保っているという点も注目です。スクラムは苦戦していますね。
ブルーズがいい試合をしてるときの目安は、以下の2つ。
・ゲインメータ490m以上
・ディフェンス突破数24以上
これを上回られると、サンウルブズは敗戦の可能性が高くなりそうです。つまり、ブルーズが意図する攻撃をさせないことが、サンウルブズ勝利への必須条件と言えるでしょう。
ブルーズ戦はぜひ、サンウルブズ公式サイトのスタッツをチェックしながら観戦してみてください!
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野澤武史 Takeshi Nozawa
日本ラグビーフットボール協会リソースコーチ。
1979年4月24日生まれ、38歳。
慶応大学、神戸製鋼コベルコスティーラーズで活躍し、日本代表キャップ4。
現在はユース世代の指導を行いながら、テレビ解説や、新聞・雑誌ので執筆も行い、著書には『7人制ラグビー観戦術-セブンズの面白さ徹底研究』(ベースボールマガジン社)がある。グロービス経営大学院修了(MBA取得)。
日本ラグビーフットボール協会リソースコーチ。
1979年4月24日生まれ、38歳。
慶応大学、神戸製鋼コベルコスティーラーズで活躍し、日本代表キャップ4。
現在はユース世代の指導を行いながら、テレビ解説や、新聞・雑誌ので執筆も行い、著書には『7人制ラグビー観戦術-セブンズの面白さ徹底研究』(ベースボールマガジン社)がある。グロービス経営大学院修了(MBA取得)。