Round12 ストーマーズ戦マッチレビュー
敗者のように肩を落とすサンウルブズと、勝者のように微笑むストーマーズ。くっきりと明暗が分かれたノーサイドだった。「残念な結果で、ほんとうに悔しいです」。この日は控えに回った堀江翔太に代わってキャプテンを務めたCTB立川理道は、試合直後にそうコメントした。
5月14日、シンガポール国立スタジアムは、気温30度近く、湿度も80%以上という蒸し暑さだった。観客は、8,479人。19:55、キックオフ。南アフリカグループ首位のストーマーズに対し、サンウルブズは序盤から100%の力を出し切って今季2勝目を狙った。ディフェンスラインを激しく前に押し上げ、ボール争奪局面にもしつこく絡む。前節のフォース戦で、マーク・ハメットヘッドコーチから、「前半、エナジーがなかったのが残念」という言葉があったように、相手に圧力をかけられなかった課題を修正し、ストーマーズの攻撃を寸断していく。
互いにPGを決めあった前半10分過ぎ、サンウルブズは、ハーフウェイライン右端のスクラムからサインプレーを仕掛けた。SOトゥシ・ピシの左に立川が走り込むと見せかけ、背後からWTBジョン・スチュワートがライン参加、前進すると素早く左へボールを展開し、ピシからFBリアン・フィルヨーンへ。フィルヨーンが防御背後へグラバーキック(地面を這うキック)を転がすと、これにWTB山田章仁が走り込んでボールを確保し、すぐにFLアンドリュー・デュルタロへパス、一気にゴールラインに迫る。サポートに走り込んだ日和佐がさらに左コーナーに迫ったところでラックとなり、このボールを山田が左コーナーぎりぎりにねじ込んだ。
山田は今季8トライ目。キックをトップスピードで追いながらバウンドの変化に合わせてボールをキャッチし、背後に走り込んできたデュルタロに頭越しの柔らかなパス。プレーの懐の深さと、卓越したスキルを持つ山田らしいプレーだった。この瞬間、山田はトライランキングで単独トップに立った。
21分には、20フェイズ以上続いたストーマーズの連続攻撃を止めきり、デュルタロがターンオーバーに成功。ピシが2本のPGを追加し、前半は、14-3というリードで折り返す。ただし、マイボールのラインアウトを奪われ、スクラムも圧力を受けるシーンがあり、タックルミス「10」(ストーマーズは1)、ハンドリングエラー「7」と、攻守にミスも多く、それをチーム全体の献身的な運動量で支えていたのが、後半への懸念材料ではあった。
後半3分、山田章仁がチャンスを作り、ピシがゴールライン直前へ。このラックから再び山田がトライをしたかに見えたが、TMOの映像判定の結果、ゴールライン直前で倒れたあと、ボールを前に動かしたという「ダブルモーション」の反則でトライは認められず。その後、ピシのPGで17-3としたが、7点を加えて、21-3としていれば勝利は濃厚だっただけに惜しいシーンだった。対するストーマーズは後半7分、南アフリカ代表のFLスカルク・バーガーほかフレッシュなメンバーを投入し、少しずつ流れが変わりはじめる。100%の力で走り続けていたサンウルブズには疲れもあっただろう。後半20分、モールからトライを奪われ、スコアは、17-10。サンウルブズも、堀江翔太に続いて、安藤泰洋、矢富勇毅ら元気な選手を投入して対抗。後半30分を過ぎて、何度もストーマーズゴールに迫る。35分にはラインアウトからモールを押し込み、反則を誘ったが、右端の位置だったためにPGを狙わず、タッチに蹴り出してラインアウトから攻めることを選択。しかし、ストーマーズLOピーター・ステフデュトイ(身長200cm)にボールを奪われてしまう。その直後にも攻め込んだが、ターンーバーされ、79分、ストーマーズのFBチェスリン・コルビにハーフウェイライン付近の密集サイドを抜け出され、最後は交代出場のPRヴィンセント・コッホにトライを奪われ、ゴールも決まって17-17。試合終了となった。
最後の10分、何度も攻め込んだだけに悔しさが募るが、攻め込んではターンオーバーされ、スクラムで押し込まれてペナルティ、ラインアウトはスチールされるなど、セットプレーの不安定さ、持ち込んだボールがキープできないという地力差を感じる同点劇でもあった。フォース戦から多くの課題が修正されたのは前向きな要素。立川が「スーパーラグビー上位のストーマーズにここまで戦えたことを自信にして、勝利をものにしたい」と語った通り、残り5試合でさらなる成長を遂げてもらいたい。
次戦は、5月21日、豪ブリスベンに乗り込み、日本代表ツイ ヘンドリック、五郎丸歩のいるレッズとの対戦となる。
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