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スーパーラグビー2019 ROUND 17 vs ストーマーズ text by 村上晃一

チーム6/9(日) 13:16
ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの今季15戦目は、南アフリカ共和国ケープタウンのニューランズ・スタジアムで行われた。プレーオフ進出の道は断たれ、ここ数試合は大量失点続き。モチベーションの低下が心配されたが、サンウルブズに根付いたネバーギブアップの精神は生きていた。プレーオフ進出に向け、3トライ以上差をつけるボーナス点を獲得しての勝利を目指すストーマーズに対し、サンウルブズは激しくプレッシャーをかけ続けた。

現地時間の6月8日、午後5時15分(日本時間=6月9日、0時15分)、試合はサンウルブズSOヘイデン・パーカーのキックオフで始まった。ストーマーズのキック処理ミスで攻め込むと、スクラムから連続アタック。トライには至らなかったが、サンウルブズ本来のアタッキングマインドを全開にして攻勢に出た。前半7分、自陣に押し込まれたが、22mライン付近でPRコナン・オドネルが低いタックルを決め、HOジャバ・ブレグバゼがボールを奪ってピンチを脱出。11分、パーカーが約45mのPGを決めて、3-0と先制する。

直後、タックルした際にいったん手を放さない反則でストーマーズにPKを与えると、タッチキックから攻め込まれ、ラインアウトからモールを押し込まれる。なんとか踏みとどまったが、ストーマーズHOボンギ・ボナンビに一瞬のスキをつかれてトライを許し、3-7と逆転された。20分、ストーマーズにゴールライン直前まで迫られたが、NO8ベン・ガンターが思い切り良く飛び出し、ミスを誘う。ガンターは24分にも好タックルを決め、FL松橋周平のジャッカルからのターンオーバーを引き出した。サンウルブズの先発15名の中では唯一のスーパーラグビーデビューとなったFL長谷川崚太を含め、FW第三列のタックル、ジャッカルは試合を通して気迫あふれるものだった。

前半29分、ストーマーズWTBクレイグ・バリーにトライされ、SOジャンルック・デュプレッシーのゴールも決まって、3-14とされた。しかし、この日のサンウルブズは飽くなき闘争心で戦った。36分にはパーカーが2本目のPGを決めて、6-14とする。その直後にはガンターが相手CTBのJJ・エンゲルブレヒトを押し戻す強烈なタックルを見舞う。このままシーズンを終えられないという意地を見て胸の熱くなったファンも多かっただろう。

後半の立ち上がりもチャンスをつかんだのはサンウルブズだった。細かなパスつなぎからFL松橋が右コーナーに迫る。左側へ放ったパスが味方につながればトライだったが、ここは、ストーマーズFBディリン・レイズにパスをカットされた。後半12分、サンウルブズが攻勢に出たところで、ボールをこぼすミス。ストーマーズに防御背後にキックを使われると、ディフェンスの戻りが遅くなり、最後はNO8ヤコ・クッツェーにトライを奪われ、6-21と突き放された。

後半17分、サンウルブズはリザーブ席から山田章仁、ラファエレ・ティモシーを投入。胸のすくトライが生れたのは、22分だ。ストーマーズ陣中盤のラックから、ボールを右へ出し、このパスを受けたパーカーが内側に走り込んできた山田にパス。山田はタックルを受けながらも身をひるがえして前に出て、倒れながらマシレワにパスを浮かす。マシレワが一気の加速でゴール中央にトライをあげた。その後もサンウルブズは、PR浅原拓真、三上正貴、FL西川征克など日本代表経験者を次々に出場させて、攻撃のテンポを上げた。その後、ストーマーズにPGを追加されたが、ストーマーズのラインアウトからのモールを止め、スクラムも相手の猛プッシュに耐えるなど健闘した。

 33分、ラインアウトモールから勝敗を決めるトライを奪われ、スコアは、13-31。このままいけば、ストーマーズは3トライ以上差をつけての勝利だったのだが、サンウルブズは勝利を信じて攻めた。直後のキックオフのボールを猛然と追いかけた山田がストーマーズの22mライン付近でこのボールを直接キャッチ。連続アタックからWTBマシレワのトライを生んだ。エガちゃん、コマネチ、スネークポーズの3連続パフォーマンスも飛び出した。終了間際にも、自陣から攻め、ラファエレのキックを山田がキャッチして攻め込んだが、最後はミスでノーサイドとなった。

 ストーマーズはキャプテンのFLシヤ・コリシ、LOエベン・エツベス、SOダミアン・ヴィレムセなど南アフリカ代表選手たちが負傷欠場などで不在だったが、それでも、モチベーションの維持が難しいなかでのサンウルブズの健闘はストーマーズを驚かせるものだった。スクラムでは苦しむ面もあったが、試合中に修正し、ラインアウトも安定させ、58%のボールを保持。ストーマーズの「11」をはるかに上回る「21」のターンオーバーに成功し、攻守に我慢強く戦った。スコット・ハンセン ヘッドコーチ代行は「結果的にストーマーズはボーナスポイントを狙わずに、勝つために試合をスローダウンさせることを選んだ」と、サンウルブズの選手達の戦いぶりを評価した。

 この日のサンウルブズは、リザーブ8人全員が日本代表になる資格があり、キャップを持っていないのはHO北出卓也のみ(北出はスーパーラグビーデビュー)。既述の選手ほかLO大戸裕矢、SH内田啓介らが気の利いたプレーでチームの勢いを引き出した。「自分たちのアタックを最後まで継続してやれば、スコアに繋がると感じていたので、(リザーブメンバーとして)流れを変えて勝つところまで持っていきたかったですが、勝ちきる事ができませんでした」(山田章仁)。勝利を目指し23人が一丸となったからこそ、悔しさが募る一戦。負けは負けだし、後半は反則も多くなったが、観る者の心を揺さぶる試合ではあった。

 6月9日より宮崎で始まる日本代表合宿メンバーから外れた選手たちもいる。しかし、この日の奮闘は、ラグビーワールドカップの日本代表メンバー入りに向けて誰もあきらめていないことを感じさせるものだった。まだ、何も終わっていないのだ。サンウルブズは次節、アルゼンチンに乗り込み、アルゼンチン代表選手でかためたジャガーズと対戦する。長旅で疲労もあるはずだが、悔いのない戦いで2019シーズンを締めくくってもらいたい。
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