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スーパーラグビー2019 ROUND 16 vs ブランビーズ text by 村上晃一

チーム6/2(日) 15:00
6月1日、秩父宮ラグビー場には、16,741人の観衆が集った。ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズは、これが今季国内最終戦。応援し続けてくれるファンのために、なんとしても勝利を届けたい。選手たちは強い気持ちでこの試合に臨んだ。

午後2時15分、サンウルブズのキックオフで試合は始まった。ブランビーズが蹴り返してきたボールからサンウルブズの先制トライが生まれる。このボールを自陣の左タッチライン際でキャッチしたWTBホセア・サウマキは、FBセミシ・マシレワにパス。マシレワはハイパントを蹴り上げると、自ら追いかけて空中でボールを後方に弾いた。ここに走り込んできたのがサウマキだ。ボールが胸にすっぽり入るとぐんぐん加速。約45mを走り切って左中間にトライをあげた。ものの見事なカウンターアタックにスタンドは大いに沸いた。この日、ゲームキャプテンを務めたSOヘイデン・パーカーのゴールも決まって、7-0と幸先の良いスタートを切った。

しかし、前半6分、サンウルブズはディフェンスの際にオフサイドを犯し、PKからのタッチキックで攻め込まれてしまう。ゴールラインを背に、ブランビーズ得意のモール攻撃を受けることになったが、低い姿勢で食い止め、秩父宮ラグビー場は大歓声に包まれた。きょうのサンウルブズは違う。そんな空気がサポーターの間にも広がったのだが、直後にブランビーズCTBイラエ・シモネにディフェンスを突破され、NO8ピート・サムにトライを奪われる。SOクリスチャン・リアリーファノのゴールも決まって、7-7の同点。

その後のサンウルブズは、ディフェンスの際にオフサイドを繰り返してしまう。レフリーに「オフサイドラインの後ろに戻ってください」と何度も注意されながら修正ができなかった。前半20分、スクラムが崩れる原因になったとしてコラプシングの反則をとられると、PKからブランビーズFBトム・バンクスの正確なタッチキックでゴールラインに迫られる。「スクラムで反則をとられたのは痛かった。規律も乱れて苦しい戦いになった」(ヘイデン・パーカー)。

反則を犯し、トム・バンクスに距離の出るタッチキックを蹴られ、ラインアウトからのモールを押し込まれるというシーンはその後何度も訪れた。しかし、この時のブランビーズはモールを押さずに素早くFLジャローム・ブラウンがサイドアタック。前半21分、CTBイラエ・シモネがインゴールに躍りこんだ。硬軟織り交ぜたブランビーズの攻撃はサンウルブズのディフェンスにプレッシャーを与え続けた。

サンウルブズもラインアウトからの攻めで、CTBフィル・バーリーが防御背後にショートパントをあげるなど、準備した攻撃で反撃を試みるのだが、ディフェンスを崩すことができない。逆に29分、リアリーファノのキックパスが右タッチライン際のWTBヘンリー・スパイトに渡り、バンクスにトライを奪われてしまう。スコアは、7-21と、14点差に広がった。

スタジアムがこの日最高の歓声に包まれたのは、前半35分のことだった。相手陣中盤でのスクラムから攻め、マシレワが抜け出す。ブランビーズのタックラーが次々にマシレワに襲い掛かる。しかし、マシレワは、ボールを持ち換えながら右手、左手でタックラーを突き放し、右コーナーにトライをあげた。お馴染みの「エガちゃんポーズ」に、「コマネチ」を挟み、自身のニックネームを表す「スネークポーズ」を披露。秩父宮ラグビー場の客席には弾けるような笑顔が広がった。面白いのはこのトライが午後2時50分ジャストだったこと。まさに、エガちゃんポーズの生みの親、お笑いタレント「江頭2:50」(えがしらにじごじゅっぷん)のトライだったわけだ。

パーカーのゴールは外れ、スコアは12-21のまま前半は終了した。前半のスタッツ(統計数値)のタックル成功率は、ブランビーズの71%に対して、サンウルブズは80%。粘り強いディフェンスでなんとか均衡状態を保っていた。選手たちの表情を見ると、疲れが見えるのは明らかにブランビーズだった。ブランビーズの本拠地オーストラリアのキャンベラは、マイナス3度という冬。真夏のような暑さの東京への遠征で気候への適応が難しかったのは確かだろう。

後半のサンウルブズは、疲れの見えるブランビーズに対して連続攻撃を仕掛けるのだが、大事なところで反則を犯し、タッチキックで陣地を戻されてしまう。後半8分、ブランビーズは、ゴール前のラインアウトからモールを組み、リアリーファノも入って10人で押し込み、交代出場のHOコーナル・マキナーニーがトライをあげた。「前半はボールを動かし、後半はゲームをコントロールできていたので、モールを使った」とリアリーファノ。後半は判で押したようにこのパターンを使って3トライ。3トライ以上の差をつけるボーナス点も獲得しての勝利でプレーオフ進出に前進した。

敗れたサンウルブズの中では、途中出場の大戸裕矢、三上正貴、山沢拓也、怪我明けのラファエレ・ティモシーらがエネルギッシュにプレーしたのは明るい材料だ。後半、サンウルブズ唯一のトライは、11分にSHジェイミー・ブースがあげた。自陣10mライン付近からマシレワがタックルを3人、4人と振り切り、ブースにつないだもの。前日、リアリーファノが「マシレワは危険なランナー」と評していたが、その言葉通りの突破力だった。最終スコアは、19-42。見せ場は作ったものの、自陣での反則で相手にチャンスを与え、後半はラインアウトモールから3トライを奪われる完敗だった。

「ボールを継続(支配)できたときは、サンウルブズらしいプレーができていたのですが、反則をとられ、ラインアウトからのモールでトライを取られたのは反省点です」。徳永祥尭の言葉がすべてだろう。同じモールで攻められながら対応できなかったことにも課題が残る。ホームでの最終戦。チームの共同キャプテンPRクレイグ・ミラーはスタンドのファンへ感謝の言葉を述べた。「シーズンを通してのサポートに感謝します。皆さんは世界一のファンです。皆さんのためにきょうは勝ちたかったのですが、それができずに申し訳なく思っています。来シーズン、また秩父宮ラグビー場で会いましょう」

 レギュラーシーズンは残すところ2試合。6月9日は南アフリカのケープタウンでストーマーズ、6月15日はアルゼンチンのブエノスアイレスでジャガーズと戦う。
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