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<マッチレビュー>
スーパーラグビー2019 ROUND 11 vs ハイランダーズ text by 村上晃一

チーム4/27(土) 16:21
ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの今季10試合目は、あらためてスーパーラグビーの激しさ、強さを痛感させられる内容となった。4月26日(金)、秩父宮ラグビー場には、小雨が降り、気温13度という寒さの中、13,423⼈が集った。応援し続けるファンの皆さんの期待に応えたい。心してキックオフを迎えたはずのサンウルブズだったが、立ち上がりからハイランダーズの勢いに圧倒されてしまう。

午後7時、サンウルブズボールのキックオフで試合は始まった。ハイランダーズSHアーロン・スミスが防御背後にハイパント。これをサンウルブズの山中亮平がクリーンキャッチして観衆を沸かせる。そのまま突進したがハイランダーズのFWに上体を抱え込まれ、モールからボールを出せなかったということで、相手ボールのスクラムとなる。このスクラムではハイランダーズが猛然と圧力をかけ、サンウルブズにペナルティーが科される。この一連のプレーがこの日の試合内容を端的に表していた。その後も、サンウルブズはFW戦で圧力を受け、苦しい戦いを余儀なくされる。

前半5分、ハイランダーズはサンウルブズ陣10mライン付近のラインアウトから攻め、いったんはタックルで倒されたLOトム・フランクリンが、すぐに立ち上がって突進、アーロン・スミスにつなぎ、再びボールをもらってトライ。SOジョシュ・イオアネのゴールも決まって、7-0とする。12分、ハイランダーズ陣22mライン付近のスクラムを得たサンウルブズだが、圧力を受けてボールを上手く出せず、ターンオーバーを許すと最後はPRティレル・ロマックスにトライされた。直後の14分、WTBテヴィタ・リーにトライを追加され、19-0。ハイランダーズに傾いた流れを止めることができない。20分、今度はラインアウトからのサインプレーでゴールラインに迫られ、ジョシュ・イオアネにトライを許し、26-0とされた。

ハイランダーズは、ボール争奪戦の近場を突いて前進を重ね、モールを組むかに見せて素早くボールを動かすなど、サンウルブズのディフェンスを縦にも横にも揺さぶり、いとも簡単にトライをあげた。サンウルブズは焦りもあって、ハンドリングエラーが多く、無理なパスをするなど攻撃が継続できない。密集サイドを一人で突破して2人目がついていけないシーンも多く、ちぐはぐな戦いだった。「試合が始まって、選手たちのメンタル的な準備ができていないと感じました。100%の力が出せずにニュージーランドのチームと戦えば、50-0の試合になります」(トニー・ブラウン ヘッドコーチ)。前半を終えて、33-0となる。

前半を終えてのスタッツ(統計数値)では、ボールを持って前進した距離が、サンウルブズの95mに対してハイランダーズは385m。タックル成功率は70%対95%と歴然とした差があった。スクラムについては、前半早々にPR浅原拓真を投入、後半からHO堀江翔太を入れて安定しはじめるが、12分、自陣からの攻撃でSOヘイデン・パーカーのパスが右横に走り込んできたWTBセミシ・マシレワにつながらず、相手にボールを奪われる。すぐに前に出ていたBKラインの背後にキックされ、WTBテヴィタ・リーに2本目のトライを許して40-0と差を広げられた。ハイランダーズのプレーは多彩でシンプルだった。密集サイドが薄いと見るや突破し、ディフェンスラインが横に広がっていれば空いたスペースに走り込み、ディフェンスが前に出てくれば背後にキックして追いかける。そして、サンウルブズの攻撃の起点となるブレイクダウン、スクラムには徹底してプレッシャーをかけてきた。すべての局面でサンウルブズは後手を踏んだ。

サンウルブズは終了間際、FB山中亮平、WTBゲラード・ファンデンヒーファーの快走でゴールラインに迫ったが、約80mの大幅ゲインにもかかわらず、ハイランダーズの巨漢選手たちが懸命に戻って守り切った。ノーサイドの瞬間、ハイランダーズのHOアッシュ・ディクソンが息苦しそうにしていたのが印象的だった。疲れた体に鞭打って全力でディフェンスに戻っていたということだ。最終スコアは、52-0。スーパーラグビー参戦4年目のサンウルブズにとって初の無得点試合となった。

試合直前にFLダン・プライアーが欠場となり、代わってキャプテンを務めたトンプソン ルークは、「後半なんとか立て直そうとしたができなかった。ラインアウトは悪くなかったのですが、スクラムは(相手の圧力に)対応できませんでした」と語った。一方、ハイランダーダーズのルーク・ホワイトロックキャプテンの言葉は弾んでいた。「ベリーハッピー。一人一人が自分の役割を果たしていました。FWの働きでBKが自由に動くことができました」。

サンウルブズに合流したばかりの堀江翔太は、後半からの出場だったが攻守に動き回った。「前半を見ていると、ディフェンスで声が出ていなかったので、そのあたりを修正してだんだん良くなりました」とコメント。同じく合流したばかりで後半17分から出場した田村優はこう話した。「うまくアタックできていなかったので、たくさんボールに触って流れを変えようとしました。何が悪かったというよりも、力が及ばなかったところがありますね」。堀江はセットプレー、ディフェンスの軸になり、田村は独特のリズムのパスでチャンスを作った。日本代表の主力2人が実力を見せたのはポジティブな点だろう。

サンウルブズはこの後、オーストラリアに遠征し、5月3日、レッズと対戦する。悪い内容の試合の後には、好ゲームをしてきたサンウルブズ。立ち上がりから、相手の圧力を受けてしまったメンタル面を修正し、今季3勝目を狙ってもらいたい。
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