<マッチレビュー>
スーパーラグビー2019 ROUND 10 vs ハリケーンズ text by 村上晃一
チーム4/20(土) 13:15
ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの今季第9戦目は、4月19日、秩父宮ラグビー場で行われた。相手はニュージーランド(NZ)カンファレンス2位で、2016年に優勝経験のあるハリケーンズ。金曜日のナイター試合は、サンウルブズ史上初の試みだったが、今季最多の16,805人の観衆が集った。第8節(4月6日)のレベルズ戦は15-42の完敗だったが、第9節はBYE WEEK(試合のない週)で、コンディションを整えて迎える第10節だった。
午後7時、ハリケーンズSOフレッチャー・スミスのキックオフで試合は始まった。サンウルブズはボールを確保するとモールを組んで前進し、その後も密集周辺で突破を狙い、アグレッシブに攻める姿勢を明確にする。前半5分、ハーフウェイライン右でラインアウトを得たサンウルブズは左オープンに展開。激しく前に出てくるのが特徴のハリケーンズ防御に対して、すれ違いざまに抜け出すプレーを仕掛ける。SOヘイデン・パーカーの左横に、FLダン・プライアーが走り込み、ディフェンダーが引きつけられたところで、その左側に、CTBラーボニ・ウォーレンボスアヤコが走り込む。
トップスピードで抜け出したウォーレンボスアヤコは、タックラーをかわしながら左方向へ走り、WTBセミシ・マシレワにパス。その瞬間、大歓声が沸き上がる。直近の2試合で5トライと大ブレーク中のマシレワは、そのまま走り切って左コーナーにトライ。「エガちゃんポーズ」からの「スネークポーズ」で観客を沸かせた。難しいコンバージョンゴールをパーカーが決めて、7-0。本来はFW第三列のウォーレンボスアヤコをインサイドCTBで起用するサプライズ編成が見事に当たったプレーだった。13分には、パーカーがPGを決め、10-0とリードする。
その直後、サンウルブズは自陣でミスを犯し、ハリケーンズのキャプテンTJ・ペレナラにトライを許した。前に出る防御の背後にキックを蹴られ、懸命に戻ったSHジェイミー・ブースが相手と交錯して倒れ、ペレナラに密集サイドを突破されるという不運も重なる失点だった。スコアは、10-7。しかし、この日のサンウルブズは粘り強かった。互いに攻め合い、ボールが行ったり来たりする中で、22分、27分とパーカーがPGを追加し、16-7とする。
そして、28分、胸のすくトライが生まれた。キャプテンを務めるFLダン・プライアーのタックルでハリケーンズのノックオンを誘うと、攻撃に転じ、パーカーが左タッチライン際のスペースに正確にキックパス。ここに走り込んだマシレワがボールを確保すると、バックスタンドの観客は思わずガッツポーズ、そしてバンザイ。マシレワは笑顔で無人のフィールドを駆け抜け、ダイビングトライを決めた。ビール片手に観戦していたビジネスマンも狂喜乱舞。この日最高潮の盛り上がりだった。スコアは、23-7。その後はハリケーンズの猛攻をサンウルブズが止め、そのままハーフタイムに入るかと思われた。しかし、39分、ボールをキープしようとしたところで倒れた選手がボールを放さない反則を犯してしまう。PGを決められ、23-10で前半を終了した。
勝利の期待が膨らむ後半だが、先にスコアしたのはハリケーンズだった。サンウルブズの前に出るディフェンスをよく見ながら、CTBンガニ・ラウマペが背後にキック、タッチライン際に転がるボールをWTBベン・ラムが拾って左コーナーにトライ。23-15と差が詰まる。5分後、マシレワの前に出るタックルが決まって反則を誘ったのだが、40mを超える距離のPGは外れた。これはヘイデン・パーカーが、2015年にパナソニック ワイルドナイツに入団して以降、日本で初めてプレースキックによるゴール(トライ後のゴール、PG)を外した瞬間でもあった。
19分、攻め込まれたサンウルブズは、WTBゲラード・ファンデンヒーファーのロングキックで地域を挽回しようとしたが、このキックをチャージされ、ハリケーンズFBチェイス・ティアティアにトライを奪われる。左タッチライン際の難しいキックをフレッチャー・スミスが決め、スコアは、23-22の1点差となる。前半から守る時間が長かったこともあって、サンウルブズの選手たちには疲れが見えた。交代選手を次々に投入して、残り20分を粘ろうとしたが、28分、ハリケーンズ陣でのラインアウトでボールを確保できず、ハリケーンズのWTBウェス・フーセンに走られてトライを許し、逆転されてしまう。
終了間際にチャンスをつかんだが、そこでもラインアウトからの攻めでミスが起き、万事休す。最後はスクラムでもコラプシングの反則をとられ、ノーサイドとなった。「前半は良い試合ができていたので、とても残念です。後半プレッシャーに耐えられませんでした」(トニー・ブラウンヘッドコーチ)。足の怪我で途中退場となったキャプテンのプライアーは「簡単なミスから集中力を欠いて崩れてしまった。ハリケーンズのようなチームには、ミスをすればトライされてしまう」と悔やんだ。痛恨のミスとなった後半28分のラインアウトに関しては、HO坂手淳史のスローイングに誰もジャンプしないというミス。坂手は「メンバーが交代した時に、合わせ切れていない」と、メンバー変更の多いサンウルブズでコンビネーションが熟成しない現状を語った。
内容的には互角に戦った中での逆転負け。ゴールラインを背負ってのディフェンスで粘り、ドライビングモールを止め、観客を沸かせるトライを奪っても、ほんの少しのミスで負けてしまう。またしてもスーパーラグビーの上位チームの強さを見せつけられた。特にオールブラックスのメンバーでもあるTJ・ペレナラは、攻守にわたる判断の良いプレーでサンウルブズのチャンスの芽を摘み、トライを演出した。そのペレナラが「とても良い雰囲気だった」と言ったのが、この日の秩父宮ラグビー場の応援だ。「我々に対する応援ではないことは分かっていますが、観客の応援は、ラグビー自体を楽しんでいるように感じられました」。
サンウルブズは、4月26日、同じく秩父宮ラグビー場のナイターでハイランダーズと対戦する。ラグビーファンの皆さんには、ラグビーを楽しむ雰囲気で試合を盛り上げてもらいたい。そして、ホームでの今季初勝利が見たい。
午後7時、ハリケーンズSOフレッチャー・スミスのキックオフで試合は始まった。サンウルブズはボールを確保するとモールを組んで前進し、その後も密集周辺で突破を狙い、アグレッシブに攻める姿勢を明確にする。前半5分、ハーフウェイライン右でラインアウトを得たサンウルブズは左オープンに展開。激しく前に出てくるのが特徴のハリケーンズ防御に対して、すれ違いざまに抜け出すプレーを仕掛ける。SOヘイデン・パーカーの左横に、FLダン・プライアーが走り込み、ディフェンダーが引きつけられたところで、その左側に、CTBラーボニ・ウォーレンボスアヤコが走り込む。
トップスピードで抜け出したウォーレンボスアヤコは、タックラーをかわしながら左方向へ走り、WTBセミシ・マシレワにパス。その瞬間、大歓声が沸き上がる。直近の2試合で5トライと大ブレーク中のマシレワは、そのまま走り切って左コーナーにトライ。「エガちゃんポーズ」からの「スネークポーズ」で観客を沸かせた。難しいコンバージョンゴールをパーカーが決めて、7-0。本来はFW第三列のウォーレンボスアヤコをインサイドCTBで起用するサプライズ編成が見事に当たったプレーだった。13分には、パーカーがPGを決め、10-0とリードする。
その直後、サンウルブズは自陣でミスを犯し、ハリケーンズのキャプテンTJ・ペレナラにトライを許した。前に出る防御の背後にキックを蹴られ、懸命に戻ったSHジェイミー・ブースが相手と交錯して倒れ、ペレナラに密集サイドを突破されるという不運も重なる失点だった。スコアは、10-7。しかし、この日のサンウルブズは粘り強かった。互いに攻め合い、ボールが行ったり来たりする中で、22分、27分とパーカーがPGを追加し、16-7とする。
そして、28分、胸のすくトライが生まれた。キャプテンを務めるFLダン・プライアーのタックルでハリケーンズのノックオンを誘うと、攻撃に転じ、パーカーが左タッチライン際のスペースに正確にキックパス。ここに走り込んだマシレワがボールを確保すると、バックスタンドの観客は思わずガッツポーズ、そしてバンザイ。マシレワは笑顔で無人のフィールドを駆け抜け、ダイビングトライを決めた。ビール片手に観戦していたビジネスマンも狂喜乱舞。この日最高潮の盛り上がりだった。スコアは、23-7。その後はハリケーンズの猛攻をサンウルブズが止め、そのままハーフタイムに入るかと思われた。しかし、39分、ボールをキープしようとしたところで倒れた選手がボールを放さない反則を犯してしまう。PGを決められ、23-10で前半を終了した。
勝利の期待が膨らむ後半だが、先にスコアしたのはハリケーンズだった。サンウルブズの前に出るディフェンスをよく見ながら、CTBンガニ・ラウマペが背後にキック、タッチライン際に転がるボールをWTBベン・ラムが拾って左コーナーにトライ。23-15と差が詰まる。5分後、マシレワの前に出るタックルが決まって反則を誘ったのだが、40mを超える距離のPGは外れた。これはヘイデン・パーカーが、2015年にパナソニック ワイルドナイツに入団して以降、日本で初めてプレースキックによるゴール(トライ後のゴール、PG)を外した瞬間でもあった。
19分、攻め込まれたサンウルブズは、WTBゲラード・ファンデンヒーファーのロングキックで地域を挽回しようとしたが、このキックをチャージされ、ハリケーンズFBチェイス・ティアティアにトライを奪われる。左タッチライン際の難しいキックをフレッチャー・スミスが決め、スコアは、23-22の1点差となる。前半から守る時間が長かったこともあって、サンウルブズの選手たちには疲れが見えた。交代選手を次々に投入して、残り20分を粘ろうとしたが、28分、ハリケーンズ陣でのラインアウトでボールを確保できず、ハリケーンズのWTBウェス・フーセンに走られてトライを許し、逆転されてしまう。
終了間際にチャンスをつかんだが、そこでもラインアウトからの攻めでミスが起き、万事休す。最後はスクラムでもコラプシングの反則をとられ、ノーサイドとなった。「前半は良い試合ができていたので、とても残念です。後半プレッシャーに耐えられませんでした」(トニー・ブラウンヘッドコーチ)。足の怪我で途中退場となったキャプテンのプライアーは「簡単なミスから集中力を欠いて崩れてしまった。ハリケーンズのようなチームには、ミスをすればトライされてしまう」と悔やんだ。痛恨のミスとなった後半28分のラインアウトに関しては、HO坂手淳史のスローイングに誰もジャンプしないというミス。坂手は「メンバーが交代した時に、合わせ切れていない」と、メンバー変更の多いサンウルブズでコンビネーションが熟成しない現状を語った。
内容的には互角に戦った中での逆転負け。ゴールラインを背負ってのディフェンスで粘り、ドライビングモールを止め、観客を沸かせるトライを奪っても、ほんの少しのミスで負けてしまう。またしてもスーパーラグビーの上位チームの強さを見せつけられた。特にオールブラックスのメンバーでもあるTJ・ペレナラは、攻守にわたる判断の良いプレーでサンウルブズのチャンスの芽を摘み、トライを演出した。そのペレナラが「とても良い雰囲気だった」と言ったのが、この日の秩父宮ラグビー場の応援だ。「我々に対する応援ではないことは分かっていますが、観客の応援は、ラグビー自体を楽しんでいるように感じられました」。
サンウルブズは、4月26日、同じく秩父宮ラグビー場のナイターでハイランダーズと対戦する。ラグビーファンの皆さんには、ラグビーを楽しむ雰囲気で試合を盛り上げてもらいたい。そして、ホームでの今季初勝利が見たい。