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<マッチレビュー>
スーパーラグビー2019 ROUND 7 vs ワラターズ text by 村上晃一

チーム3/30(土) 14:48
歴史的な勝利は、いつも突然やってくる。ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの今季2勝目は、オーストラリアの地での初勝利であり、参戦4年目にして初のアウェイ戦2勝目でもあった。サンウルブズはここまで1勝5敗でオートラリアカンファレンスの最下位。対するワラターズは同カンファレンス首位で前節は王者クルセイダーズを破っていた。キャプテンのFLマイケル・フーパ―、CTBカートリー・ビール、FBイズラエル・フォラウらオーストラリア代表が多数揃っている。第2節、秩父宮ラグビー場での対戦時は、30-31でサンウルブズが惜敗したが、それだけにワラターズはホームでの快勝を目論んでいたはずだ。

3月29日(金)、現地時間19:45、タスマン海を望む港湾都市ニューカッスルのマクドナルド・ジョーンズ・スタジアムで試合は始まった。先制したのはワラターズだった。前半2分、ゴール前のラインアウトからのサインプレーでFLフーパ―が抜け出し、SHニック・フィップスにつないでインゴール左中間にトライをあげる。11分、サンウルブズもSOヘイデン・パーカーがPGを決めて、3-7とするが、15分、ワラターズはWTBキャメロン・クラークのトライで、3-12と突き放した。このトライ後のゴールをSOマック・マイソンが外したが、これが両チームのキッカーが失敗した唯一のプレースキックになった。

20分、サンウルブズはワラターズゴールに迫って連続攻撃をしかけ、攻守に動き回っていたLOグラント・ハッティングが左中間に手を伸ばしてトライ。パーカーのゴールも決まって、10-12とする。そして、30分、WTBセミシ・マシレワのパスを受けたFLツイ ヘンドリックが相手のタックルを受けながら右手でオフロードパス、左タッチライン際をFLダン・プライアーが抜け出すと、これをサポートしたマシレワが逆転トライをあげた。両手を左右に振っての「エガちゃんポーズ」。自身が似ていると言われるお笑い芸人「江頭2:50」をまねたパフォーマンスが飛び出し、サンウルブズは勢いづいた。ワラターズもPGを返し、前半は、17-15で終了する。

後半もワラターズが先にトライをあげ、17-22と逆転したが、内容は互角の好勝負となる。両チームともにスクラム、ラインアウトのマイボールを確保し、ディフェンス面でも譲らない。サンウルブズが目の覚めるようなトライをあげたのは、後半9分のことだった。ワラターズ陣に5mほど入った左ラインアウトから右オープンに展開すると、ボールは、CTB立川理道、SOヘイデン・パーカー、そして、背後からライン参加してきたWTBマシレワへ渡る。ハーフウェイラインの手前でボールを受けたマシレワは一気の加速でタックラーを置き去りにし、そのまま50m以上の距離を走り切って、右コーナーに飛び込んだ。エガちゃんポーズからのスネークポーズ。胸のすくトライと、ユーモラスなパフォーマンスに、ニューカッスルの観客席にも笑顔が広がった。

その後のパーカーのゴールは、長く語り継がれるだろう。右タッチライン際から蹴ったボールはいったんポストの右に逸れるような軌道で飛んだ。今季初の失敗かと思いきや、ボールはスライスしてポストの中に吸い込まれたのだ。パーカーのプレースキックの成功率は、7節に入っても100%を維持している。マシレワは4分後にも、相手のミスボールを拾って、ハットトリックとなる3つめのトライ(スコアは、31-22)。これが決勝点となった。後半なかば以降はワラターズの猛攻にピンチの連続となったが、的確なタックルで失点を1トライのみに抑えた。

31-29の2点差での残り15分は、緊迫感ある攻防になったが、この日のサンウルブズは無駄な反則をしなかった。34分にはFB山中亮平が前に出るタックルでスローフォワードを誘うシーンもあり、時おり、思い切りの良いタックルをしつつ、粘り強く守った。最後は交代出場のSH田中史朗がゲームを落ち着かせ、残り時間1分で得たPKもあわてずにスクラムを選択し、うまく時間を使った。

パーカーがタッチに蹴り出してノーサイド。勝ちきれない、もどかしい戦いが続いていた選手たちに歓喜の笑顔が広がった。公式サイトのスタッツ(統計数値)はほぼ互角。トライ数は4対4、ボールを持って突進した回数は109対109、タックル数も113対113と同じ。ミスタックルはワラターズの22に対してサンウルブズは21だった。

トニー・ブラウン ヘッドコーチは、次のようにコメントした。「日本のファンが我々を支えてくれた事がこの素晴らしい勝利に繋がったと思います。今週は準備においても、試合のパフォーマンスにおいても、選手たちはよくやってくれました。とくにディフェンスについては素晴らしかったです。 以前から申し上げているとおり、我々は勝利する実力を持ったチームです。自分たちはできるという事を信じてやってきましたし、その自信は今日の試合でさらに強くなりました。来週に向けてそれがさらに強くなっていくと信じています」。

先発SH茂野海人はこう語った。「自分たちのゲームプランを信じること、フィジカルの部分で負けない、そして相手の攻撃に対してしっかりとディフェンスで対応する。それができた結果だと思います。20年を最後にサンウルブズがスーパーラグビーから離れるにニュースは選手たちにとっても残念ですが、まだまだ試合が続くので、これまで4年間積み上げてきたことを無にするのではなく、継続していくことで日本ラグビー界もいい方向に向かっていくと思います」

ブラウンヘッドコーチの言葉通り、オーストラリア代表を多数そろえたワラターズと今季2度にわたって接戦を繰り広げたことは、何よりの自信になるだろう。サンウルブズは次節(4月6日)、メルボルンでレベルズと対戦する。
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