ヒトコム サンウルブズ公式サイトヒトコム サンウルブズ公式サイト

<マッチレビュー>
スーパーラグビー2019 ROUND 3 vs チーフス text by 村上晃一

コラム3/3(日) 14:45
2019年の初勝利は4シーズン目にして初のアウェイ戦勝利でもあった。ヒト・コミュニケーション サンウルブズの新たな歴史を刻んだノーサイドの瞬間、選手たち、コーチ陣、マネージメントスタッフ、そして会場で、日本で声援を送ったサポーターに笑顔が広がった。
キックオフ直後から攻勢に出たエナジーあふれる戦いを振り返ってみよう。

3月2日(土)、ニュージーランド北島ハミルトンのFMGスタジアム・ワイカト。試合は、現地時間の午後7時35分、チーフスSOダミアン・マッケンジーのキックオフで始まった。これがダイレクトでタッチラインを割り、サンウルブズはハーフウェイライン中央のスクラムを得る。安定したスクラムからボールは右へ。キャプテンのCTBマイケル・リトルがタックルを受けながらパスを出すと、WTBゲラード・ファンデンヒーファーが大きく前進。
さらに左オープンに展開してフィールド中央にできたラックから、LOヘル ウヴェがまっすぐディフェンスを破ってゴールラインに迫る。

ここでできたラックからさらに右に展開し、リトル、PRパウリアシ・マヌ、ファンデンヒーファー、NO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコとパスがつながり、最後は右タッチライン際で待ち受けていたFL松橋周平がマッケンジーのタックルを振り切ってトライ。ボールを持った選手が適格な判断を繰り返す連続攻撃で、サンウルブズが幸先の良いスタートを切った。難しい角度のゴールをパーカーが難なく決めて、スコアは、7-0。

直後のチーフスのキックオフからもサンウルブズはアグレッシブだった。自陣から攻め、PR山下裕史がディフェンスを突破するなど一気に相手陣に入る。ここでCTBシェーン・ゲイツが膝を痛めて、CTBフィル・バーリーと交代するアクシデントがあったが、6分、パーカーがPGを追加して、10-0とする。その後もボールを保持して連続攻撃を仕掛けたサンウルブズだが、地域を進めるキックに関してはチーフスのカウンターアタックを受け、自陣で反則を犯し、23分、マッケンジーにPGを決められてしまう。

26分、パーカーがPGを返して、スコアは、13-3。ここでサンウルブズは攻撃のリズムを作っていたSH茂野海人が負傷退場するという2度目のアクシデントに見舞われる。しかし、サンウルブズ初登場となったSHジェイミー・ブースはじめ、交代選手の奮闘によって勢いが衰えることはなかった。32分、松橋、バーリーらがボールをつないでゴールラインに迫り、最後はヘルが4人のタックルを受けながらポス右になだれ込むパワフルなトライを追加した。背後から押し込んだLOトンプソン ルークの動きも効果的だった。

 さらにサンウルブズは、35分、ヘルが相手ボールを奪うジャッカルで反則を誘い、パーカーがPGを決めて、23-3。過去2度の優勝(2012年、2013年)を誇り、2015年以降毎年10勝以上の相手に前半で20点差をつけたのだ。国旗を打ち振るサンウルブズサポーターも大いに盛り上がっていた。NZラグビー協会は、ラグビーワールドカップ(RWC)日本大会に出場する候補メンバーのプレー時間の制限を行っている。そのため、チーフスも数名のオールブラックスが休養し、キャプテンを務めたLOブロディー・レタリックも前半で交代するなど、経験の浅いメンバー編成となった。それを考慮しても、サンウルブズのパフォーマンスは精度が高かった。コンタクト局面で当たり負けず、スクラムも安定し、ブレイクダウン(ボール争奪局面)で相手がプレッシャーをかけてこないと見るや、FLツイ ヘンドリックらが果敢に前に出た。

 しかし、キックオフ直後からエンジン全開で飛ばしたこともあって、後半はやや失速。チーフスの猛攻をあび、前半6分、CTBアレックス・ナンキベルにトライを奪われる。マッケンジーが、ゴールライン上に跳ね上がるショートパントを蹴り、ナンキベルが思い切りよく走り込んだトライだった。スコアは、23-10。

防戦一方のサンウルブズは、ブレイクダウンにオフサイドの位置から入ったり、ボールを奪おうとして倒れたまま手を使ってしまったり、反則が多くなる。しかし、松橋が「先週のワラターズ戦は1点差という惜しい負けでしたが、その結果が今週チームにはポジティブに働き、いい形にまとまりました」とコメントした通り、勝利への執念が足を動かし、チーフスに得点を与えなかった。17分には、相手キックを切り返して攻め、最後はファンデンヒーファーがトライ、30-10とする。24分に1トライを奪われたが、その後の攻撃をしのぎ、30-15でノーサイドとなった。

スクラムは概ね安定していた。チーフスでプレー経験(2016年)のある先発PR山下裕史が引っ張り、後半のメンバー交代でやや乱れたが獲得率は100%だった。一戦ごとに課題は修正されている。この日はモールのディフェンスが良くなっていた。個々には、WTBファンデンヒーファーが15回のボールキャリーで両チーム最高の122mをゲインし、ヘルがチーム最多の5回のディフェンス突破でチーフスを苦しめた。タックル回数はトンプソンが両チーム通じて1位の20回で相変わらずの仕事量。交代出場のLOトム・ロウも、約30分のプレー時間で10回のタックルを決めるなど骨惜しみしない動きを見せた。課題はディフェンス時の規律だろう。反則数はチーフスの4に対して、14。その大半の9回が後半に起きていた。

「選手達の努力を誇りに思います。日本のファンにとっても今日は素晴らしい勝利となりました。日本からの応援が我々の力になりました」とスコット・ハンセンヘッドコーチ代行。次の相手は、同じくNZカンファレンスのブルースだ。アウェイでの初の連勝に向け、課題を修正して臨めるか。再びファンを喜ばせるパフォーマンスを見せてもらいたい。
CONTENTS
スローガン