マッチレビュー 2018 ROUND 11 ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ vs.ハリケーンズ text by 村上晃一
コラム4/28(土) 15:12
ヒト・コミュニ―ケーションズ サンウルブズの今季9戦目は、4月27日(金)、ニュージーランド北島ウェリントンのウェストパック・スタジアムで行われた。対戦相手のハリケーンズは、ここまで6勝1敗。ニュージーランド(NZ)カンファレンス2位だが、15チーム中、もっとも負け数が少なく、失点も少ない。ホームグラウンドでは、NZ以外のチームに14連勝中で、サンウルブズのジェイミー・ジョセフヘッドコーチも「現在、リーグ最強」と評価するチームだ。
その最強の相手にサンウルブズは集中力高く戦った。ハリケーンズのトライがTMO(映像判定)にかけられ、スローフォワードで取り消しになった直後のスクラムは、WTB福岡堅樹がSHの位置に入って、スクラムサイドを大きくゲインする工夫されたアタックを披露。その後は密集サイドを意図的に攻め、PRクレイグ・ミラー、LOグラント・ハッティング、NO8姫野和樹らが前進。前半9分、ゲームキャプテンのFLピーター・ラピース・ラブスカフニのトライにつなげた。15分には、ハリケーンズのWTBジュリアン・サヴェアにトライを奪われたが、18分、SOヘイデン・パーカーのPGで10-7とリードする。その後はボールをキープしての攻撃と、粘りのディフェンスで拮抗した展開に持ち込んだ。
スコアが動いたのは28分、サンウルブズがディフェンスラインのオフサイドの反則をとられ、攻め込まれた相手ボールのスクラムからだった。サンウルブズ陣22mライン中央のスクラムからハリケーンズは左に展開、SOボーデン・バリットが縦に走り込み、内側にサポートしたSHフィンレー・クリスティーにトライを奪われる。2年連続の世界最優秀選手であり、スピードのあるバリットにタックルをずらされての失点だった。ディフェンスラインのオフサイドはこの日も再三取られており、修正しなければならない課題だろう。
しかし、前半終了間際、ゴールラインを背負った相手ボールスクラムからNO8リード・プリンセプにトライを許す。一度は反則をとられたスクラムを8人で集中して止めたと思われた直後に走られ、ディフェンスが後手を踏んだ失点だった。この日はボールを失ったスクラムが2本あった。引き続きレベルアップが必要だ。スコアは、10-21となり、前半が終了した。
後半のキックオフは勝敗を分けたプレーだったかもしれない。ハリケーンズの蹴り上げたボールは10mラインに届かなかったが、サンウルブズのCTBマイケル・リトルが迷わずキャッチして、ラブスカフニにつないで相手陣へ。しかし、ハリケーンズのタックルは常にボールを狙っており、ラブスカフニの手からボールがこぼれる。攻守は一転、ハリケーンズFBジョーディー・バリットに独走トライを許し、10-26と突き放された。その後は、ハリケーンズのゴール前ラインアウトで、WTBホセア・サウマキを参加させてトライを狙うトリッキーな攻撃を見せるが、ハリケーンズの強固なディフェンスにゴールラインを越えられず、この後も何度も跳ね返された。それでもサンウルブズは飽くなき闘争心でアタックし、後半29分、交代出場のSH流大が防御裏にキックし、これを追った福岡が低いバウンドを上手く拾って左コーナーに飛び込む。「流ともしっかりコミュニケーションが取れて、裏にスペースが空いていると分かっていたので狙いました」(福岡)。
これで、15-26となり、流れが変わるかと思われたのだが、直後のキックオフからの一連のプレーで、またしてもオフサイドの反則をとられてしまう。この日のレフリーはラインオフサイドをよく見ていた。気を付ければ防げた反則だった気がする。ここからは、ハリケーンズの才能豊かな選手たちの独壇場となって3連続トライを奪われる。タックルを受けながら、どんな体勢でも正確なパスを出すハリケーンズの選手たちには脱帽だが、70分間のうち、7割がた相手陣でアタックできていただけに、惜しまれる最後の10分だった。
「後半の先制トライは我々がとるべきでした。そうする事で先にプレッシャーを与え続ける事ができたはずです。フェイズを重ねずにトライをしたかったのですが、それができませんでした」。ジョセフヘッドコーチがコメントした通り、効率よくトライをとれていれば、最後までもつれる展開になっただろう。ニュージーランド勢との戦いでディフェンス面での向上が確認できたが、アタックに関しては足りない部分が多いと痛感させられた。しかし、選手たちが手ごたえをつかんだのも事実だろう。スクラムは苦しんだが、課題だったラインアウトの成功率は、91.7%。ハリケーンズの66.7%を大きく上回った。
「この 2週間ニュージーランド最強の2チームと戦ってきました。今日の試合に関しては高い割合で相手チームの陣地でしっかりプレッシャーを与える事ができました」と、ラブスカフニは言う。「一番大事な事はこのチームが全体としてポジティブなマインドセットを持ち続ける事です。すべてが上手くいっている時は、自分たちが正しいと信じることは簡単です。今は上手くはいっていない時ですが、きちんと自分達のプレーを見つめ信じることによって、結果もついてくると思います」
なにより、クルセイダーズ、ハリケーンズというNZ2トップの最強ディフェンスと、最速のアタックを経験できたことは何よりの財産になる。次週はバイウィークで試合がなく、5月12日、秩父宮ラグビー場でオーストラリアのレッズを迎え撃つ。勝ち急がず、この日のスタンダードで戦えれば今季初勝利の可能性は十分にある。
その最強の相手にサンウルブズは集中力高く戦った。ハリケーンズのトライがTMO(映像判定)にかけられ、スローフォワードで取り消しになった直後のスクラムは、WTB福岡堅樹がSHの位置に入って、スクラムサイドを大きくゲインする工夫されたアタックを披露。その後は密集サイドを意図的に攻め、PRクレイグ・ミラー、LOグラント・ハッティング、NO8姫野和樹らが前進。前半9分、ゲームキャプテンのFLピーター・ラピース・ラブスカフニのトライにつなげた。15分には、ハリケーンズのWTBジュリアン・サヴェアにトライを奪われたが、18分、SOヘイデン・パーカーのPGで10-7とリードする。その後はボールをキープしての攻撃と、粘りのディフェンスで拮抗した展開に持ち込んだ。
スコアが動いたのは28分、サンウルブズがディフェンスラインのオフサイドの反則をとられ、攻め込まれた相手ボールのスクラムからだった。サンウルブズ陣22mライン中央のスクラムからハリケーンズは左に展開、SOボーデン・バリットが縦に走り込み、内側にサポートしたSHフィンレー・クリスティーにトライを奪われる。2年連続の世界最優秀選手であり、スピードのあるバリットにタックルをずらされての失点だった。ディフェンスラインのオフサイドはこの日も再三取られており、修正しなければならない課題だろう。
©︎Photo by Hagen Hopkins/Getty Images
スコアは、10-14。リードを許したサンウルブズだが、ここからハリケーンズ陣に攻め込み、福岡がインゴールに走り込む。ここはFBウィリアム・トゥポウのラストパスがスローフォワードの判定。31分には、ハッティングがディフェンスラインを突破し、パーカー、ミラーとつないだが、ゴールライン直前でミラーが激しいタックルにあってボールをこぼし、そこから一気に逆襲されてしまう。トライを獲り切っていればリードできただけに残念だが、ハリケーンズのCTBヴィンス・アソに独走されたところを福岡、ラブスカフニらがよく戻って止めたのはチーム力アップを証明していた。しかし、前半終了間際、ゴールラインを背負った相手ボールスクラムからNO8リード・プリンセプにトライを許す。一度は反則をとられたスクラムを8人で集中して止めたと思われた直後に走られ、ディフェンスが後手を踏んだ失点だった。この日はボールを失ったスクラムが2本あった。引き続きレベルアップが必要だ。スコアは、10-21となり、前半が終了した。
後半のキックオフは勝敗を分けたプレーだったかもしれない。ハリケーンズの蹴り上げたボールは10mラインに届かなかったが、サンウルブズのCTBマイケル・リトルが迷わずキャッチして、ラブスカフニにつないで相手陣へ。しかし、ハリケーンズのタックルは常にボールを狙っており、ラブスカフニの手からボールがこぼれる。攻守は一転、ハリケーンズFBジョーディー・バリットに独走トライを許し、10-26と突き放された。その後は、ハリケーンズのゴール前ラインアウトで、WTBホセア・サウマキを参加させてトライを狙うトリッキーな攻撃を見せるが、ハリケーンズの強固なディフェンスにゴールラインを越えられず、この後も何度も跳ね返された。それでもサンウルブズは飽くなき闘争心でアタックし、後半29分、交代出場のSH流大が防御裏にキックし、これを追った福岡が低いバウンドを上手く拾って左コーナーに飛び込む。「流ともしっかりコミュニケーションが取れて、裏にスペースが空いていると分かっていたので狙いました」(福岡)。
これで、15-26となり、流れが変わるかと思われたのだが、直後のキックオフからの一連のプレーで、またしてもオフサイドの反則をとられてしまう。この日のレフリーはラインオフサイドをよく見ていた。気を付ければ防げた反則だった気がする。ここからは、ハリケーンズの才能豊かな選手たちの独壇場となって3連続トライを奪われる。タックルを受けながら、どんな体勢でも正確なパスを出すハリケーンズの選手たちには脱帽だが、70分間のうち、7割がた相手陣でアタックできていただけに、惜しまれる最後の10分だった。
©︎Photo by Hagen Hopkins/Getty Images
「後半の先制トライは我々がとるべきでした。そうする事で先にプレッシャーを与え続ける事ができたはずです。フェイズを重ねずにトライをしたかったのですが、それができませんでした」。ジョセフヘッドコーチがコメントした通り、効率よくトライをとれていれば、最後までもつれる展開になっただろう。ニュージーランド勢との戦いでディフェンス面での向上が確認できたが、アタックに関しては足りない部分が多いと痛感させられた。しかし、選手たちが手ごたえをつかんだのも事実だろう。スクラムは苦しんだが、課題だったラインアウトの成功率は、91.7%。ハリケーンズの66.7%を大きく上回った。
「この 2週間ニュージーランド最強の2チームと戦ってきました。今日の試合に関しては高い割合で相手チームの陣地でしっかりプレッシャーを与える事ができました」と、ラブスカフニは言う。「一番大事な事はこのチームが全体としてポジティブなマインドセットを持ち続ける事です。すべてが上手くいっている時は、自分たちが正しいと信じることは簡単です。今は上手くはいっていない時ですが、きちんと自分達のプレーを見つめ信じることによって、結果もついてくると思います」
なにより、クルセイダーズ、ハリケーンズというNZ2トップの最強ディフェンスと、最速のアタックを経験できたことは何よりの財産になる。次週はバイウィークで試合がなく、5月12日、秩父宮ラグビー場でオーストラリアのレッズを迎え撃つ。勝ち急がず、この日のスタンダードで戦えれば今季初勝利の可能性は十分にある。