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マッチレビュー 2018 ROUND 10 ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ vs.クルセイダーズ text by 村上晃一

コラム4/23(月) 11:01

©JSRA photo by Martin Hunter / Getty Images for Sunwolves 

ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの今季8戦目は、4月22日(日)、ニュージーランド南島クライストチャーチのAMIスタジアムで行われた。現地時間午後7時35分のキックオフ。立ち上がりの10分間で、サンウルブズは昨年の覇者クルセイダーズの精度の高い攻撃を見せつけられることになった。

クルセイダーズのキックオフをサンウルブズLOグラント・ハッティングがクリーンキャッチし、SOヘイデン・パーカーが蹴り返す。これがキックチャージに飛び出してきた選手たちの圧力を受け、飛距離の短いノータッチキックとなる。このカウンターアタックからクルセイダーズは右に左にボールを動かし、最後は、SOマイク・デラニーが抜け出し、CTBライアン・クロッティーが右中間にトライする。開始1分にも満たない先制トライだった。

その後はサンウルブズがディフェンスでよく前に出たが、タックルで倒したかと思われるシーンでパスをつながれ、ボールを奪い返すことができない。7分、サンウルブズ陣のスクラムで圧力を受けて反則をとられ、その後のラインアウトからのモールで一気にトライを奪われる。タッチライン方向に押し出すようにディフェンスしようとしたサンウルブズの押す方向を利用したように、タッチライン際をすり抜けたクルセイダーズのモールだった。

開始10分で14失点となったが、その後はサンウルブズがクルセイダーズを防戦一方に追い込む。14分、PKからSH田中史朗が速攻を仕掛け、ゴール前で9回ボールをリサイクルして最後は左コーナーにCTBマイケル・リトルがトライ。スコアは、5-14。直後のキックオフからサンウルブズが大きく攻め込むが、トライには至らず。ここで突如として天候が悪化。雹混じりの豪雨となり、互いにキックで地域を進め、パスの距離を短くしてボールをキープする攻防となる。


©JSRA photo by Martin Hunter / Getty Images for Sunwolves

25分以降は、自陣深く攻め込まれ、ゴールラインを背負ってのディフェンスになったが、ここは粘り強くタックルし、最後はFLピーター・ラピース・ラブスカフニがタックル後のボールに絡んで反則を誘い、ピンチを脱した。その後の攻撃も守り切り、前半はこのままのスコアで折り返した。「ディフェンスはしっかり声でコミュニケーションがとれていました」(WTB福岡堅樹)という言葉通り、組織ディフェンスの真ん中を破られたのは開始直後の失トライのみ。ディフェンスのレベルアップを感じる内容だった。


後半3分、パーカーがPGを決め、8-14と差を詰めると、さらにディフェンスでプレッシャーをかけてミスを誘い、4分、ゴール前のスクラムを得て猛攻を仕掛ける。リトルがゴールライン直前に迫るシーンもあったが、トライは獲り切れず。11分にはPGを追加して、11-14とする。しかし、直後のキックオフでは、やや深めに蹴られたボールをバウンドさせてしまってノックオン。振り返ればこれが痛恨のミスだった。その後は自陣にくぎ付けになり、15分、いったんボールを奪い返したが、タッチキックがミスになり相手にボールを渡してしまう。これを起点に13次攻撃の末にクロッティーにインゴールに走り込まれた。一連のディフェンス中では、タックルが決まったと思ったところで、アクロバティックなパスを次々につながれた。ニュージーランドの選手たちの能力の高さを再認識させられたが、キックオフをしっかりキャッチしていればと悔やまれる失トライだった。


後半22分、クルセイダーズのWTBマナサ・マタエレにトライを追加され、11-26とされた直後、サンウルブズに千載一遇のチャンスが訪れる。相手のキックをキャッチしたパーカーがハーフウェーライン付近からハイパント。これをFBウィリアム・トゥポウが22mライン上でキャッチし、サポートしたサム・ワイクスにつないだのだ。ゴールラインまであと5メートル。再び点差を詰めるチャンスだったのだが、クルセイダーズのディフェンスも戻りが素早く、ここでもトライが獲り切れなかった。


©JSRA photo by Martin Hunter / Getty Images for Sunwolves

「こちらもいいディフェンスを続けていましたが、最終的にミスからトライを取られるという場面があり、そこはやはりクルセイダーズの方が上回っていました。我々はチャンスや惜しい場面があっても、そこを仕留め切れなかった」。SH田中史朗がコメントした通り、少ないチャンスをものにし、終盤になっても、15人が素早くポジショニングし、攻守の切り替えに瞬時に反応するクルセイダーズには学ぶべきところが多い。サンウルブズも徹底してトレーニングし、意識、スキルを高めなくてはいけない部分だろう。最後はもう1トライを追加され、11-33で敗れた。

「悪天候の中、ラインアウトに関してはプレッシャーをかけ、ミスを誘う事ができた」(ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ)。ラインアウトについては、ボールを失ったのは2回で成功率は、84.6%。クルセイダーズの73.3%よりも高い数字を出し、ブレイクダウン(ボール争奪局面)でも互角以上に戦った。タックル成功率もクルセイダーズと同じ88%という数字を残し、統計数値では着実なレベルアップが見て取れる。一方で、流れを相手に渡してしまうミスや反則は減らすことができていない。次戦も、クルセイダーズと変わらない決定力を持つハリケーンズが相手だ。ミスは失点に直結する。丁寧に戦いたい。

ようやく負傷から復調し、サンウルブズで今季初先発となった福岡堅樹は「次戦ではまずこちらから得点をあげ、相手を焦らせるような展開に持ち込みたいです」と語った。一昨年の王者を相手にチーム力アップを証明したい。
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