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マッチレビュー 2018 ROUND 6 ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ vs.チーフス text by 村上晃一

チーム3/26(月) 12:46

©JSRA photo by H.Nagaoka

ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの今季5戦目は、3月24日、秩父宮ラグビー場で行われた。ピッチはしっかり芝が根付き、快晴、微風の好コンディション。13,464⼈の観衆が集った。サンウルブズが迎え撃ったのは、過去2度の優勝を誇るチーフス。今季初勝利を狙うサンウルブズは、キックオフ直後から松島幸太朗の怪我で急きょ先発することになったWTBセミシ・マシレワを走らせ防御を崩しにかかった。


マシレワは近鉄ライナーズのFBとして昨季のトップリーグで最も多くボールを持って走り、最も長い距離を前進した選手だ。マシレワの突進からの一連の攻撃で、昨年まで3シーズンにわたってチーフスでプレーしたFLリーチ マイケルが走り込む。ここに強烈なタックルを見舞ったのが、チーフスのキャプテンFLサム・ケインだ。前日の記者会見で「もっとリーチと一緒にプレーしたかった」とコメントしていたケインは、リーチが素晴らしい選手だと知っているからこそ「リーチは俺が止める」とばかり、このあとも強烈なタックルでリーチを止め、サンウルブズのチャンスの芽を摘んだ。


前半3分、今季初先発のSO田村優が相手陣へのキックを蹴り込もうとしたが、これが前にいたSH田中史朗の頭に当たってしまう。跳ね返ったボールをチーフスに奪われ、4分、チーフスLOタイラー・アードロンに先制トライを許す。11分、チーフスの猛攻を止め、ゴールラインを背負ってのマイボールスクラムを得る。なんとかピンチを脱出できるかに思われたが、チーフスの強烈な押しで反則を取られ、そこからの速攻でLOブロディー・レタリックにトライを奪われる。リーチを止め、ラインアウトにプレッシャーをかけ、サンウルブズの強みだったスクラムに猛然と圧力をかけてきた姿に、サンウルブズの強みを一つずつつぶしにかかるチーフスの周到な準備が垣間見えた。


17分、ラインアウトからのサインプレーでHOネイサン・ハリス、20分にはWTBソロモン・アライマロに連続トライを奪われる。アライマロのトライは圧巻だった。キックオフ後の攻防でキックをキャッチしたFBマーティー・マッケンジーにサンウルブズのCTBラファエレティモシーが猛然とタックル。チャンスになるかと思われた刹那、マーティーは弟のSOダミアン・マッケンジーにパスを送った。ここからは、スーパーラグビー屈指のスピードランナーであるダミアンが一気にサンウルブズ陣へ走り込み、パスをつないだ。流れるような美しいトライだった。


サンウルブズ側から見れば、前に出るディフェンスをしながら、ファーストタックルが決まらず、二番手、三番手のタックルが遅れてスペースを与えてしまう悔しいトライ。そこではパスをしないだろうと思われるような狭いスペースでもパスをつなぐチーフスに対して、サンウルブズは対応が遅れた。キックの応酬などでフォーメーションが崩れた「アンストラクチャー」の状況での攻守についてはチーフスが上だった。「チーフスはアンストラクチャーな展開が得意ということはわかっていたので、相手に2つ以上のパスを繋がせないようにディフェンスをしたかったが、こちらが外とのコミュニケーションが取れていないところもあった」(姫野和樹)。


4連続トライ後のゴールを決めたのは、オールブラックスでもあるダミアン・マッケンジー。蹴る前の「微笑み」のルーティン。そしてゴールポストのど真ん中に吸い込まれるキックの正確さにサンウルブズのサポーターからも感嘆のため息が漏れた。マッケンジーはこの後も自在に正確なパスとキックでチームを操り、サンウルブズの防御を翻弄した。この他、ケイン、レタリックらオールブラックスの選手たちが最後まで献身的に走り、キックを追いかける「チェイス」でも数名の選手が綺麗なラインを形成してプレッシャーをかける姿は見習うべきところが多かった。


28点を追いかけるサンウルブズがようやくスコアしたのは、前半36分のことだ。フィールド中央のスクラムからサインプレーを仕掛け、右タッチライン沿いにいたリーチからマシレワにボールが渡った。秩父宮ラグビー場が大歓声に包まれたのは、後半2分、WTBホセア・サウマキのトライだった。後半から投入されたWTBレメキ ロマノ ラヴァが相手キックをキャッチしてカウンターアタックを仕掛け、ここから左オープンにパスが回る。ボールを受けたWTBホセア・サウマキは、まずはチーフスのネイサン・ハリスの胸を右手でひと突きして抜け出すと、ダミアン・マッケンジーのタックルを右手で下に落としてゴール左隅に飛び込む。オールブラックス2人をハンドオフでかわしたトライは観客の度肝を抜いた。


©JSRA photo by H.Nagaoka

スコアは28-10。流れをつかむかに思われたが、直後にダミアン・マッケンジーのトライで再び突き放されてしまう。以降、サンウルブズは何度かチャンスを作るのだがトライが獲り切れず、防御背後へキックされた時の対処が甘く、次々にトライを許した。前節のライオンズ戦で前に出る組織ディフェンスがようやく機能し始めたかに見えたが、アンストラクチャーからのチーフスの攻めを防ぐことはできず、ラインアウトも4本を失い、獲得率は75%、ここまで97%を誇ったスクラムの成功率も77.8%と、セットプレーにも課題が残った。前節のライオンズ戦から怪我や疲れもあって、先発で11名の変更があったことも上り調子を維持できなかった要因かもしれない。

ディフェンスが機能しなかったことについて、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「前に出るディフェンスは、一人がタックルを外されると一気に前進されるリスクがあります。しかし、大きな相手に待っていては簡単に前に出られてしまう」と話し、今度も前に出るディフェンスを磨いていく意向を示した。HO堀江翔太は「チームとしてかみ合っていないところがあった。お互いがあうんの呼吸で動けるところまでやらないといけないと思った」と連携の重要さを語った。古巣と戦ったリーチ マイケルは「チーフスは(考えていた以上に)セットプレーが強かった。しかし、世界のトップチームと戦えば弱みが見つかる」とコメント。その言葉通り、スーパーラグビーで戦っているからこそ露になる課題を修正しながらレベルアップを続けるしかないのだろう。


サンウルブズは、一週の休みを経て、4月7日、秩父宮ラグビー場でオーストラリア代表を多数含むワラターズと対戦する。
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