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マッチレビュー 2018 ROUND 5 ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ vs. ライオンズ

コラム3/19(月) 16:34
ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの今季4戦目は、日本時間の3月17日深夜(18日、0:15)、南アフリカ共和国ヨハネスブルグのエミレーツエアラインパークにて行われた。相手は昨年のレギュラーシーズンで一度しか負けず、2年連続の準優勝を果たしたライオンズ。前節、ニュージーランドのブルーズに終了間際の逆転負けを喫しているだけに、ベストメンバーを編成しての必勝態勢。試合前の円陣の表情にもその決意が見てとれた。

しかし、この日のサンウルブズは、今季最高ともいえるパフォーマンスを見せる。南アフリカへの長旅からの連戦という疲れ、1,700mという高地での戦い、さまざまな不安要素をものともせず、立ち上がりからディフェンスラインを素早く押し上げてプレッシャーをかけた。前半2分、今季初のプレースキッカーを務めたCTBウィリアム・トゥポウのPGで先制。4分、ライオンズが得意とするモールを食い止めてターンオーバーを勝ち取り、直後のピンチのスクラムも互角に組んだ。
 
上々の「入り」だったわけだが、8分、中盤でのマイボールラインアウトを奪われると、そこから連続攻撃を許し、FBアンドリース・クッツェーに逆転トライを奪われる。サンウルブズの試合を通してのラインアウト獲得率は、60%。200㎝、198㎝(2人)、195㎝の長身選手が並ぶライオンズに対して、サンウルブズの先発FWは190㎝超の選手が一人もいなかった。その身長差を工夫するのが課題なのだが、安定しないラインアウトは最後までサンウルブズを苦しめることになった。


©︎Gallo Images/Getty Images for Sunwolves

16分には、ライオンズの「伝家の宝刀」とも言えるラインアウトからのモールで攻め込まれたが、ここはFW陣が低く押し返し、最後はSO立川理道も参加してターンオーバー。ところが、ゴールラインを背負ったマイボールのスクラムで猛然と押し込まれると、ボールを奪われそのまま痛恨のトライを許した。これは、この試合でサンウルブズが唯一ボールを失ったスクラムだった。スコアは、3-14。

直後のキックオフからは、CTBトゥポウの前に出るタックルからターンオーバーし、ライオンズ陣のゴール前スクラムからトゥポウが縦突進、サポートしたFLピーター・ラブスカフニがゴールラインに迫ると、その密集の横にFB松島幸太朗が走り込んでトライ。10-14とした。ライオンズがパスを後ろに下げたときは、サンウルブズの素早く上がるラッシュディフェンスが功を奏し、チャンスが生まれた。ここは狙い通りだろう。

前半27分、ライオンズがサンウルブズ陣ゴールライン直前のラインアウトからモールを押し込んできた。サンウルブズも対抗。「止めた!」そう思った瞬間、ライオンズのHOマルコム・マークスが低い姿勢でインゴールへ。31分、今度はサンウルブズがトライを返す。自陣で得たPKからSH流大が速攻を仕掛け、相手陣深く攻め込むと、流が、防御背後の左タッチライン際にキックし、ライオンズのSHロス・クロニエがキャッチしたところで、WTBホセア・サウマキが猛然とタックル。そのままボールを拾って、サポートしたFL徳永祥尭がつなぎ、PRクレイグ・ミラーが左コーナーに飛び込む。PKからは速攻、相手SHがカバーしたスペースにキックを上げる徹底した戦略が生きたトライだった。前半を終えて17-19。ボール保持時間、相手陣へ攻め込んだ時間ともに、サンウルブズは48%。そのほかの数字もほぼ互角に渡り合っていた。
 

©︎Gallo Images/Getty Images for Sunwolves


後半開始早々にSO立川理道がキックをチャージされてトライを許したのは痛かったが、その後もサンウルブズの組織ディフェンスが機能し、攻めては意図的にキックを使い、ボールをキープして右に左に動かした。圧巻のトライは、後半11分のサウマキ。自陣右端のスクラムからの左オープン攻撃でトゥポウのロングパスを受けたサウマキは、左タッチライン沿いでライオンズFBクッツェー、WTBローハン・ヤンセ・ファンレンズバーグを小さなステップでかわして加速、WTBアピウェ・ディアンティのタックルをスピードの緩急で振り切ると左コーナーにダイブ。ヨハネスブルグの観客を驚かせた。トゥポウのゴールも決まって、24-26と再び2点差。サウマキは、10回のボールキャリー(ボールを持っての突進)で、両チーム合わせても段違いの168mの距離を前進、圧倒的なディフェンス突破能力を披露した。サンウルブズはさらに後半19分、LO姫野和樹がライオンズSOエルトン・ヤンチースのパスをインターセプト、約45mを走り切って逆転トライ。ゴールも決まって、31-26とする。

しかし、その後はラインアウトモールで圧力をかけられ、2017年南アフリカ最優秀選手のHOマルコム・マークスに2本目のトライを許すなど突き放された。だが、サンウルブズはあきらめなかった。31-40で迎えた終了間際、自陣のフェアキャッチから松島がディフェンスの誰もいなくなった相手陣にボールを蹴り込むと、SO中村亮土、FLヴィリー・ブリッツ、HO坂手淳史という途中出場3選手が懸命に追いかけ、パスをつないでトライが生まれる。これで、三度目の2点差(38-40)。逆転を狙って最後の攻撃を仕掛けたが、ボールを継続支配できず、ノーサイドとなった。


©︎Gallo Images/Getty Images for Sunwolves

「勝ちきれないのは実力がない証拠。悔しい」と流大キャプテン。姫野和樹は「細かな判断やミスがこの2点という点差に表れていると思う」と語った。ゴールライン直前でトライを獲り切れず、トライチャンスのラインアウトでボールをスチールされ、ほんの一瞬でもボールキャリアーが孤立するとボールを奪われてしまうなど、ボール争奪戦でのスキルはライオンズが一枚上だった。しかし、ベストメンバーのライオンズを追い詰めたのは確か。戦術、戦略の理解も深まり、ディフェンスの連携も良くなった。「どのように試合を運びたいか選手らが体現できるようになってきたことは、ポジティブな点です」(ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ)。

 
次戦は3月24日、秩父宮ラグビーで迎え撃つ相手はニュージーランドの強豪チーフスだ。ライオンズよりスピーディーなチームに対して、どこまでディフェンスが機能するか。このままレベルアップを続けたい。
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