日本ラグビーの新たな扉、スーパーラグビーへの挑戦。
コラム2/8(月) 14:00
待ちに待ったスーパーラグビー2016の開幕が間近に迫った。世界の超一流選手を日本で見られることもあって胸を躍らせるファンの皆さんも多いだろう。スーパーラグビーは、「世界最高峰のプロリーグ」、「世界最高のエンターテインメントラグビー」と、さまざまな表現をされるリーグだが、今年からは「もっともワールドワイドなプロリーグ」という称号も加わることになった。
世界の三強でもあるニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアの各国からプロチーム(各5チーム)が出て戦ってきたのが従来のスタイルだが、2016年からは、アルゼンチン、日本、南アフリカからチームが加わり、18チームで開催される。改めて世界地図を眺めると溜息が出る。この距離を移動しながら毎週のように戦っていくのだから、「世界一タフなリーグ」と言われるのもうなずける。プロの興行なので、試合前後のイベントや試合そのものの内容も魅せる要素が強い。ファンの皆さんには超一流の個人技を大いに楽しんでもらいたいが、なぜここに日本チーム「サンウルブズ」が参戦するのか簡単にまとめておきたい。
個人が海外のプロリーグに挑戦するのは他競技でもよくある話だが、プロチームを編成してチームごと海外のプロリーグに参加するのというのは日本のスポーツ界では初のケース。目的は日本代表強化である。昨年秋のラグビーワールドカップ(RWC)で示された通り、日本代表が勝つことこそ、ラグビー普及の一番の近道。2019年に日本で開催されるRWCを成功させるためにも代表強化の推進は不可欠だ。現在、世界ランキング10位の日本代表が実力を上げるためには強い国との試合経験を数多く組むしかない。ところが、日本より強い国が少ない上に強豪国同士の試合は数年先までスケジュールが決まっている。日本がそこに割って入っても、強豪国との試合は年に3、4試合組むのが精いっぱい。そこで出てきたアイディアがスーパーラグビーへの参戦だった。
南半球強豪国の代表選手、代表予備軍が揃うスーパーラグビーのレベルは、世界ランキング10位までのチームと大差ない。レギュラーシーズンだけで15試合あり、ここに参加することで世界トップレベルの経験値は格段に高まる。理想的には日本代表メンバーで参加したほうがチームとして強くなるが、海外チームでプレーを望む選手も多かった。この件に関して、サンウルブズを運営する一般社団法人ジャパンエスアールの上野裕一CEOは言う。「リーチ マイケルなど他のチーム(リーチはチーフス)と契約をしている選手もいますが、ポジティブにとらえています。今回の参戦は日本代表強化が目的です。リーチも『オールブラックスの選手がチームにたくさんいる中で自分を鍛えてもらいたい』と話しています。他のチームでプレーする選手はそれぞれの場所で活躍し、最終的に召集された日本代表が強くれなればいい。サンウルブズは、多くの選手達にスーパーラグビーで戦い、個々にレベルアップする機会を与えるものだと思っています」
各チーム新しい戦略・戦術にチャレンジする色合いが強く、国の威信をかけて必勝態勢で戦うワールドカップとは戦い方が異なるため、同じようなスタイルでは戦えないという見方もある。
さて、今季のスーパーラグビーだが、本稿執筆時点で、サンウルブズ以外のチームに、昨年の日本代表メンバーが7名プレーすることになった(リーチ マイケル、山下裕史=チーフス、五郎丸歩、ツイ ヘンドリック=レッズ、田中史朗=ハイランダーズ、マレ・サウ=ブルーズ、松島幸太朗=レベルズ)。それぞれのチームでの戦いも楽しみだ。優勝を争うのは、昨年の覇者ハイランダーズ、昨季決勝を戦ったハリケーンズのニュージーランド勢に、オーストラリア代表を多数擁するワラターズ、南アフリカのブルズ、ストーマーズあたりか。ストーマーズは指揮をとるはずだったエディー・ジョーンズが、イングランド代表監督に就任したため、出だしでつまづいた。元南ア代表CTBロビー・フレックヘッドコーチの手腕に期待がかかる。2015年のRWCでベスト4に進出したアルゼンチン代表メンバーがずらりと揃うジャガーズがどこまでやれるのかも注目。あの情熱的なラグビーが長いシーズンを通して発揮できるだろうか。
サンウルブズは、開幕戦で、南アフリカのライオンズと対戦する。ライオンズには、日本のNTTコミュニケーションズで活躍するSOエルトン・ヤンチースが所属。キャプテンは、7人制、15人制の両方で南アフリカ代表に選出されたFW第三列のワーレン・ホワイトリー(193㎝、105㎏)。WTBアンソニー・フォルミンクは100m10秒4の俊足。南アフリカの他チームと同様に運動能力の高い選手達がアグレッシブに前に出てくる。サンウルブズとしてはゴールラインを背負う時間帯をできるだけ少なくしたい。昨年は南アフリカ・カンファレンスで2位になっており、侮れない相手だ。
参加18チームは、南アフリカグループ(8チーム)、オーストラリア・ニュージーランドグループ(10チーム)に分かれる。サンウルブズは南アフリカグループを2つに分けた中で、「アフリカ・カンファレンス1」に入り、他3チームとホーム&アウェイの総当たり(6試合)。「アフリカ・カンファレンス2」の4チームとそれぞれ1試合ずつ。そして、「オーストラリア・カンファレンス」の5チームと1試合ずつ戦う。これで、総計15試合。オーストラリアとニュージーランドのカンファレンスとは隔年で戦う。来年は「ニュージーランド・カンファレンス」というわけだ。ファイナルシリーズ(8チーム)に進めるのは、各カンファレンスの1位4チーム、南アフリカグループから1チーム、オーストラリア・ニュージーランドグループから3チームが勝ち点上位から選ばれる。
サンウルブズも上位をうかがうのだが、マーク・ハメットヘッドコーチは、「今年は経験を積むシーズン」と話す。長距離移動、過密な試合日程の中でいかにコンディションをいい状態に保って戦っていくのか。ほとんどの選手が初めて経験するプロのリーグでの戦いぶりを長い目で見守りたい。しかし、選手の気持ちは熱い。堀江翔太は言っていた。「準備期間は短いのですが、日本人選手はぜったいにスーパーラグビーで通用します。毎試合必死で相手に食らいついていきます。まずは一勝です」。初戦のライオンズ戦で、最初の目標をクリアすることを祈って開幕を待ちたい。
世界の三強でもあるニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアの各国からプロチーム(各5チーム)が出て戦ってきたのが従来のスタイルだが、2016年からは、アルゼンチン、日本、南アフリカからチームが加わり、18チームで開催される。改めて世界地図を眺めると溜息が出る。この距離を移動しながら毎週のように戦っていくのだから、「世界一タフなリーグ」と言われるのもうなずける。プロの興行なので、試合前後のイベントや試合そのものの内容も魅せる要素が強い。ファンの皆さんには超一流の個人技を大いに楽しんでもらいたいが、なぜここに日本チーム「サンウルブズ」が参戦するのか簡単にまとめておきたい。
個人が海外のプロリーグに挑戦するのは他競技でもよくある話だが、プロチームを編成してチームごと海外のプロリーグに参加するのというのは日本のスポーツ界では初のケース。目的は日本代表強化である。昨年秋のラグビーワールドカップ(RWC)で示された通り、日本代表が勝つことこそ、ラグビー普及の一番の近道。2019年に日本で開催されるRWCを成功させるためにも代表強化の推進は不可欠だ。現在、世界ランキング10位の日本代表が実力を上げるためには強い国との試合経験を数多く組むしかない。ところが、日本より強い国が少ない上に強豪国同士の試合は数年先までスケジュールが決まっている。日本がそこに割って入っても、強豪国との試合は年に3、4試合組むのが精いっぱい。そこで出てきたアイディアがスーパーラグビーへの参戦だった。
南半球強豪国の代表選手、代表予備軍が揃うスーパーラグビーのレベルは、世界ランキング10位までのチームと大差ない。レギュラーシーズンだけで15試合あり、ここに参加することで世界トップレベルの経験値は格段に高まる。理想的には日本代表メンバーで参加したほうがチームとして強くなるが、海外チームでプレーを望む選手も多かった。この件に関して、サンウルブズを運営する一般社団法人ジャパンエスアールの上野裕一CEOは言う。「リーチ マイケルなど他のチーム(リーチはチーフス)と契約をしている選手もいますが、ポジティブにとらえています。今回の参戦は日本代表強化が目的です。リーチも『オールブラックスの選手がチームにたくさんいる中で自分を鍛えてもらいたい』と話しています。他のチームでプレーする選手はそれぞれの場所で活躍し、最終的に召集された日本代表が強くれなればいい。サンウルブズは、多くの選手達にスーパーラグビーで戦い、個々にレベルアップする機会を与えるものだと思っています」
各チーム新しい戦略・戦術にチャレンジする色合いが強く、国の威信をかけて必勝態勢で戦うワールドカップとは戦い方が異なるため、同じようなスタイルでは戦えないという見方もある。
さて、今季のスーパーラグビーだが、本稿執筆時点で、サンウルブズ以外のチームに、昨年の日本代表メンバーが7名プレーすることになった(リーチ マイケル、山下裕史=チーフス、五郎丸歩、ツイ ヘンドリック=レッズ、田中史朗=ハイランダーズ、マレ・サウ=ブルーズ、松島幸太朗=レベルズ)。それぞれのチームでの戦いも楽しみだ。優勝を争うのは、昨年の覇者ハイランダーズ、昨季決勝を戦ったハリケーンズのニュージーランド勢に、オーストラリア代表を多数擁するワラターズ、南アフリカのブルズ、ストーマーズあたりか。ストーマーズは指揮をとるはずだったエディー・ジョーンズが、イングランド代表監督に就任したため、出だしでつまづいた。元南ア代表CTBロビー・フレックヘッドコーチの手腕に期待がかかる。2015年のRWCでベスト4に進出したアルゼンチン代表メンバーがずらりと揃うジャガーズがどこまでやれるのかも注目。あの情熱的なラグビーが長いシーズンを通して発揮できるだろうか。
サンウルブズは、開幕戦で、南アフリカのライオンズと対戦する。ライオンズには、日本のNTTコミュニケーションズで活躍するSOエルトン・ヤンチースが所属。キャプテンは、7人制、15人制の両方で南アフリカ代表に選出されたFW第三列のワーレン・ホワイトリー(193㎝、105㎏)。WTBアンソニー・フォルミンクは100m10秒4の俊足。南アフリカの他チームと同様に運動能力の高い選手達がアグレッシブに前に出てくる。サンウルブズとしてはゴールラインを背負う時間帯をできるだけ少なくしたい。昨年は南アフリカ・カンファレンスで2位になっており、侮れない相手だ。
参加18チームは、南アフリカグループ(8チーム)、オーストラリア・ニュージーランドグループ(10チーム)に分かれる。サンウルブズは南アフリカグループを2つに分けた中で、「アフリカ・カンファレンス1」に入り、他3チームとホーム&アウェイの総当たり(6試合)。「アフリカ・カンファレンス2」の4チームとそれぞれ1試合ずつ。そして、「オーストラリア・カンファレンス」の5チームと1試合ずつ戦う。これで、総計15試合。オーストラリアとニュージーランドのカンファレンスとは隔年で戦う。来年は「ニュージーランド・カンファレンス」というわけだ。ファイナルシリーズ(8チーム)に進めるのは、各カンファレンスの1位4チーム、南アフリカグループから1チーム、オーストラリア・ニュージーランドグループから3チームが勝ち点上位から選ばれる。
サンウルブズも上位をうかがうのだが、マーク・ハメットヘッドコーチは、「今年は経験を積むシーズン」と話す。長距離移動、過密な試合日程の中でいかにコンディションをいい状態に保って戦っていくのか。ほとんどの選手が初めて経験するプロのリーグでの戦いぶりを長い目で見守りたい。しかし、選手の気持ちは熱い。堀江翔太は言っていた。「準備期間は短いのですが、日本人選手はぜったいにスーパーラグビーで通用します。毎試合必死で相手に食らいついていきます。まずは一勝です」。初戦のライオンズ戦で、最初の目標をクリアすることを祈って開幕を待ちたい。