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マッチレビュー 2018 ROUND 18 ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ vs. ワラターズ text by 村上晃一

チーム7/9(月) 01:21
今季最多失点での悔しい敗北だった。初の3勝をあげ、勢いに乗ってオーストラリアに乗り込んだヒト・コミュニケーションズ サンウルブズだったが、前半終了間際にレッドカードを受けて退場者を出し、終盤にはイエローカード(10分間の一時退場)でさらに一人少なくなるという苦境に立たされ、次々にトライを奪われた。前半は勝利の可能性のある戦いだっただけに悔やみきれない大敗だった。

 

7月7日(土)、サンウルブズは、シドニーでオーストラリアカンファレンス首位のワラターズと戦った。ワラターズは、オーストラリア代表のFBイズラエル・フォラウが出場停止明けで復帰したほか、PRセコペ・ケプ、LOロブ・シモンズ、SHニック・フィップス、SOバーナード・フォーリー、CTBカートリー・ビール、WTBタンゲレ・ナイヤラヴォロなど代表メンバーがずらり。プレーオフへのカンファレンス1位通過を確かなものにするため、必勝を期していた。

 

前半はサンウルブズが健闘する。前半10分、SOヘイデン・パーカーの強風をものともせずPGを成功させて先制。直後のキックオフは空中戦に強いFBフォラウにボールをキャッチされ、そこからの連続攻撃でPRケプにトライを奪われる。トライ後のゴールキックはSOフォーリー。このゴールの2点でスーパーラグビー900点の大台に乗せた。その後はサンウルブズのスピーディーな連続攻撃にワラターズが反則を繰り返し、レフリーが注意する場面もあり、攻守にプレッシャーをかけていた。

 

20分、パーカーのPGで6-7と差を詰めると、22分、WTB山田章仁の逆転トライが生まれる。自陣でのディフェンス時にCTBジェイソン・エメリーが力強いタックルでノックオンを誘い、こぼれたボールを山田がパス。これを受けたパーカーが防御背後に蹴ったボールは左タッチライン際を転々とする。ワラターズのフォーリーがタッチの外に出ると判断してスピードを緩めた瞬間、あきらめずに追いかけた山田の胸にボールがすっぽりと入り、そのまま独走トライ。パーカーのゴールも決まって、13-7とリードした。

 

25分、ラインアウトからのサインプレーでワラターズのフォラウにトライを奪われたが、28分にはディフェンスラインを突破した山田が絶妙のタイミングで左タッチライン際のFLリーチ マイケルにパスを送り、リーチがワラターズのFLネド・ハニガンをハンドオフで突き放してトライし、再び18-12とリードする。この際のゴールキックはパーカーがミス。プレースキックの連続成功は38回で止まった。

 

ワラターズのパワフルな選手たちの連続突進を食い止め、なんとか僅差勝負に持ち込んでいたサンウルブズだが、34分、パーカーが相手陣に蹴り込んだボールからカウンターアタックを許し、オーストラリア代表の天才CTBビールにトライされ、18-19と逆転を許す。そして38分、フォラウにトライを奪われるのだが、この一連の攻撃の中で、サンウルブズのWTBセミシ・マシレワがワラターズのSOバーナード・フォーリーの足を跳ね上げ、頭から地面に落とす危険なタックルを犯してしまう。映像判定の末、レッドカードで退場処分となり、サンウルブズは後半の40分間を14人で戦うことになった。

 

「前半はワラターズ相手に十分にプラッシャーをかけることができていたと思います。カードが出なければ、後半で自分たちのスピードとエナジーでプレッシャーをかけ続けることができたと思いますが、14人で戦うには我々はまだ力不足です」(トニー・ブラウンヘッドコーチ代行)。

 

個々の能力の高いワラターズに対抗するには、全員が相手より素早く、多く動き続けるのがサンウルブズ勝利の条件だった。同じ人数ですら、ディフェンスを崩されていたのだから14人になれば対抗するのは難しい。後半開始早々にPGを決められたサンウルブズは、次第に点差を広げられた。後半6分にはバックスの中心であるCTBマイケル・リトルがひじを痛めて退場。さらに苦しい状況となる。

 

その中で一矢報いたのは、山田章仁だった。後半15分、相手キックをからのカウンターアタックでFLエドワード・カークが突進、フィールド中央でできたラックから左へボールを動かし、最後にパスを受けた山田は、フォラウと一対一となる。タックルに入ろうとするフォラウの前で、飛び上がった山田は着地の瞬間左へコースを変え、フォラウを置き去りにしてタッチライン際を駆け抜けてトライ。美しい個人技で観客を沸かせた。「サンウルブズはネバーギブアップだ!」。前節のブルズ戦勝利でのヴィリー・ブリッツの言葉を思い出す、トライだった。スコアは、25-46。

 

しかし、その後はスクラムでも圧力を受け、30分にはスクラムサイドでプレッシャーをかけたSH田中史朗が勢い余って相手SHを頭から落とす反則でシンビン(10分間の一時退場)となり、13人で戦うことになった。結局、ここから3トライを畳みかけられてしまった。シーズンが深まるにつれて強豪相手にも自信を持って戦えるようになったサンウルブズだが、個々にはまだまだ力が足りないことを痛感させられる敗北だった。「少ない人数の中で一人一人少しずつ仕事量を上げようとコミュニケーションをとっていたのですが、うまく機能しませんでした」という山田章仁の言葉通り、レッドカードの代償はあまりに大きかった。

 

先発したSH流大ゲームキャプテンは、試合後、選手たちに前向きに語り掛けたという。「今季4勝目をアウェイで挙げて新しい歴史を作ろうと声をかけました。今日の試合を自分たちの成長につなげて、最終戦である次のレッズ戦にかけたいと思います」。今季最後の相手は、オーストラリアカンファレンス4位のレッズ。サンウルブズの2018年シーズンの集大成として、ベストゲームで締めくくってもらいたい。
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