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スーパーラグビー2017 ROUND17 ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ vs.ブルーズ
マッチレビュー

コラム7/17(月) 14:05
こんな結末を誰が想像しただろうか。強豪ひしめくニュージーランドカンファレンスのブルーズを相手に、48-21という快勝である。しかも、ブルーズの3トライ(21点)は、前半26分までにあげたもの。ノーサイドの瞬間、秩父宮ラグビー場のスタンドは総立ちになり、選手たちは飛び跳ね、抱き合い、肩を叩き合って喜びを爆発させた。「本当にうれしいし、なんだか落ち着かないです」(WTB福岡堅樹)。「気持ちよく終わりたい。その一心でした。応援し続けてくれるファンの皆さんのためにも勝てて良かった」(SH内田啓介)。どの選手のコメントも興奮気味だった。第7節・ブルズ戦以降、勝利に見放され、直近の南アフリカ遠征では、94失点、52失点の連敗である。喜びもひとしおだろう。

7月15日正午過ぎ、サンウルブズSO田村優のキックオフで試合は始まった。30度を超える真夏日の中で、両チームの選手にとってタフな戦いとなったが、序盤はブルーズがうまくゲームを運んだ。
前半8分、NO8スティーブン・ルアトゥアが右タッチライン際を抜け出してチャンスを作り、最後はキャプテンのHOジェームズ・パーソンズがトライをあげる。続く12分、サンウルブズは内田のパントキックを追ってターンオーバーに成功したが、素早く仕掛けようとしたところで内田がパスをする腕を持たれてターンオーバーを許し、LOジェラード・トゥイオティマリナーにトライを奪われた。 

地域獲得がうまく行かずに苦しんでいたサンウルブズは、前半14分、ようやく相手陣深く入ったところでスクラムを得る。ここからの連続攻撃でCTBティモシー・ラファエレがトライ。しかし25分、同点トライを目指して攻め込んだところで、田村のパスをブルーズFBマイケル・コリンズにインターセプトされ、7-21と突き放されてしまう。

28分、サンウルブズはラインアウトからのサインプレーで福岡が抜け出し、CTBウィリアム・トゥポウがゴールラインに迫ったが、ここはブルーズWTBメラニ・ナナイがトゥポウの腕をはたいてノックオン。無念のノートライも、サンウルブズの士気は衰えなかった。前半終了間際には福岡のカウンターアタックからチャンスを作り、最後は右タッチライン際でWTB松島幸太朗がタックラーをずらして、サポートの徳永祥尭がつなぎ、SH内田啓介がトライ。14-21として前半を折り返した。徳永は、NO8ヴィリー・ブリッツの脳しんとうチェックのため一時交代出場していたなかでの好プレーだった。

後半は完全にサンウルブズペースとなる。田村を軸にキックで地域を進め、ブルーズ陣内で多くの時間を戦うことに成功。後半13分、松島がインゴールにボールを蹴り込むと、トゥポウと交代出場のCTB山中亮平が追う。インゴールでボールを抑えようとしたSHサム・ノックがボールを確保した瞬間にトゥポウがタックルしてミスを誘い、こぼれたボールを山中が押さえた。TMO(映像判定)に持ち込まれたが、場内の大型スクリーンには明らかにボールを押さえる山中の手が映し出され、その瞬間に大歓声があがった。田村のゴールは外れ、19-21と2点差。
この日、最高の盛り上がりは、18分だった。ブルーズのジェローム・カイノがトゥポウへのハイタックルでシンビン(10分間の一時退場)になったPKから、サンウルブズはPGを狙わず、タッチキック。ラインアウトからトライを狙った。「相手FWは7人。ここは行ける、勝負しよう、サンウルブズの選手たちのスピリットが自然な判断につながりました」(ヴィリー・ブリッツ ゲームキャプテン)。

ゴールラインまで10mほどの右ラインアウト。モールを組んだ瞬間、LO谷田部洸太郎は「行ける」と感じた。モールが動き始めると、トゥポウほかBKの選手も参加。サポーターの大声援を受けて一気に押し込む。ブルーズがたまらずモールを崩すと、レフリーから「ペナルティトライ」が宣告された。両腕を突き上げる選手たち。「モールでなかなかトライが獲れなかったので、うれしかったのです」(谷田部)。今季のスーパーラグビーで採用されている試験的ルールでは、ペナルティトライはゴールを狙う必要なく7点が入る。この瞬間、サンウルブズは26-21と5点のリードを奪った。
勝利が現実的なものになり、観客席のボルテージも最高潮に。直後に、SH茂野海人、SO小倉順平が投入され、サンウルブズはさらにテンポアップ。23分には、連続攻撃からその茂野がトライ。28分には相手のミスボールを茂野が蹴り、自らそのボールを確保して、サポートのラファエレへパス。36-21とするトライを挙げる。勝つだけならこれで十分だったが、流れに乗ったサンウルブズは、35分にラファエレがキックチャージからトライ、終了間際には小倉のキックを追った徳永がタックラーを弾き飛ばしながらトライを追加。驚きの7連続トライでの大勝だった。

試合のスタッツ(統計数値)では、ボールを持って進んだ距離を表す「ゲインメーター」で、ブルーズの494mを大きく上回る599m。ラインアウトの成功率92.3%(ブルーズ71.4%)、スクラム成功率100%と、セットプレーも安定していた。ディフェンス面も素早く前に出るタックルが決まり、キックのあとのチェイスライン(キックを追うディフェンスライン)も機能し、密集サイドのディフェンスもFWの選手が反応良く立ち上がって穴を作らず、安定感があった。無駄なキックも少なく、チャンスではボールをキープして攻め続けた。今季のベストゲームかもしれない。

暑さが味方したのは確かだが、サンウルブズの選手にとってもタフな環境だった。それでも選手たちは勝利を追い求め、最後まで我慢強く戦い抜いた。ゲームキャプテンを務めたブリッツは言った。「きょうは23人全員がリーダーでした。1週間を通して強度の高いセッションを続けたのも良かったです。1人1人が心を込めてプレーしました。両CTB(ラファエレ、トゥポウ)は特にディフェンスで勝利に貢献しました。1対1のタックルをしっかり決めてくれたことで、全員に勢いを与えてくれたと思います」

フィロ・ティアティア ヘッドコーチは、スーパーラグビー初先発となったPR具智元を称えた。「ふくらはぎのケガから復帰し、そのパフォーマンスはすばらしかったです」。具は、FWで最多の10回のタックル、相手ボールを奪う値千金のジャッカル、ボールを持っての突進とその身体能力の高さで活躍した。多くの選手が「ハードワークが実を結んだ」と話し、連敗中にも気持ちを切らさず、タフなトレーニングを積んだことを勝因に挙げた。

6月のテストマッチシリーズ直後の南アフリカ遠征は大量失点で連敗したが、気持ちが沈みがちな状況でチームを奮い立たせたのは、ヴィリー・ブリッツだった。HO日野剛志は言っていた。「あいつのために頑張りたいと思わせる選手です。ライオンズ戦(94失点)は精神的に辛かったけど、そのときも、もうワンステップ上げようと前向きに話していました」。窮地にチームを鼓舞し続け、自らも体を張ったプレーでチームを引っ張ったブリッツの存在なくして、今季2勝目、スーパーラグビー通算3勝目はなかったのかもしれない。

そのブリッツは、試合直後、観客の皆さんに日本語であいさつした。「みなさん、こんにちは。このシーズン、すばらしいサポートありがとうございます。来年また会いましょう!」
この勝利で、サンウルブズは勝ち点「4」、3トライ以上の差をつけるボーナス点「1」を獲得し、総合勝ち点「12」で、18チーム中17位でシーズンを終えた。

©JSRA photo by H.Nagaoka

ROUND17 7月15日(土)12:05
ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ 48-21 ブルーズ
秩父宮ラグビー場, 東京
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