ヒトコム サンウルブズ公式サイトヒトコム サンウルブズ公式サイト

Round15 Warathas戦 マッチレビュー

コラム7/3(日) 08:00

強い日差しが照りつける秩父宮ラグビー場は、試合前のピッチレベルで軽く30度を越えていた。スーパーラグビーに初参戦したサンウルブズの2016年ホーム最終戦。相手はオーストラリア代表を多数含むスター軍団ワラターズということも手伝って、18,147人の観衆が詰めかけ、両チームの全力プレーに声援を送った。

ホーム最終戦で応援してくれたファンに是が非でも勝利を届けたいサンウルブズ。対するワラターズは、オーストラリアカンファレンスでブランビーズと激しい首位争いを繰り広げており、3トライ以上の差をつけるボーナス点を獲得しての勝利で、勝ち点「5」を積み上げるのが最低限の目標だった。前日、ブランビーズがレッズに勝利したことで、モチベーションはさらに高まっていた。

午後2時15分、ワラターズSOバーナード・フォーリーのキックオフで試合は始まった。序盤のサンウルブズは自陣から仕掛けて大幅ゲインを勝ち取り、ディフェンスでもアグレッシブに前に出た。HO木津武士が低いタックルを決め、スーパーラグビーデビューとなったLO小瀧尚弘らがフィジカル面でも互角の好勝負を繰り広げる。しかし、先制したのはワラターズだった。自陣からの攻撃で194㎝、123㎏の巨漢WTBタンゲレ・ナイヤラボロがタックルをされながら体を前に出して「オフロードパス」。これを受けたCTBロブ・ホーンがサンウルブズ陣深く走り込み、203㎝、140㎏のLOウィル・スケルトンが素早くサポート、木津のタックルを受けながらパスを出し、FLマイケル・フーパーから今季初先発のSHマット・ルーカスにパスがわたってトライ。ルーカス以外はオーストラリア代表選手がパスをつないだトライだった。

その後は、サンウルブズが連続攻撃で攻め入り、SO田村優がPGを決め、前半23分には、FBルアン・フィルヨーンの約57mの長距離PGが決まってスタンドは大歓声に包まれる。「バーを越えてくれた良かったよ。常に練習はしていたから自信はあった」(フィルヨーン)。3分後に田村が2本目のPGを決め、9-7と逆転。だが、リードしたのはわずか2分だけだった。直後のキックオフの切り返しに失敗したサンウルブズは、自陣22mラインでワラターズボールのラインアウトを与えてしまう。その後の一連の攻撃からトライに至るフィニッシュは見事だった。

SOフォーリーの縦突進でできたポイントから、ボールはCTBイズラエル・フォラウへ。このとき、ワラターズは狭いスペースに3人が並んでおり、サンウルブズはフォラウと次の選手に思い切ってプレッシャーをかけた。ところがフォラウはタックルされる直前、紙一重でボールを指ではじき、右隣の選手を一人飛ばしてFLジャック・デンプシーへパス。瞬時の加速で抜け出したデンプシーがインゴール右中間に飛び込んだ。スコアは、14-9。フォラウは14節までの12試合で、ボールを持って前進した距離が全選手のなかで唯一1000mを越える突破力を誇る。しかし、この日は、技ありパスでトライを演出したほか、味方のミスで転々とするボールをしなやかに拾い上げて一気にゴールラインまで走りきるなど、多彩な才能を見せつけた。

前半を終えて、12-26とワラターズが14点のリード。2トライ、2ゴール差をつけられたサンウルブズにとって、後半の入りが大切なのは誰もが分かっていた。しかし、その勝負所で得点したのはワラターズだった。サンウルブズ陣10mライン付近のスクラムを猛プッシュして反則を誘い、その後のラインアウトからのモールでディフェンスを集め、一気に左オープンにボールを展開してWTBリース・ロビンソンが左コーナーにトライをあげる。12-33と突き放したワラターズは、サンウルブズのディフェンダーがボール保持者に思い切って圧力をかけるのを見透かしたように、FWが細かなパスをつないでタックルの的を絞らせなかった。そして、一人一人が確実に前に出ながら、深めのサポートからスピードをつけて走り込んでくる選手に余裕を持ってパスをつないだ。

逆に後半のサンウルブズは、まったく前に出られずに沈黙。交代出場でスーパーラグビーデビューとなったCTB山中亮平、FL金正奎、WTB山下一らも勢いを出そうと奮闘し、何度かチャンスを作ったがトライには至らなかった。ゲームキャプテンを務め、前半は相手選手からボールをもぎ取るなど大活躍だったCTB立川理道が脳震盪のチェックのため前半で退場したのも痛かった(ドクターからゴーサインが出たが大事をとって後半はベンチへ)。終了間際、CTBデレック・カーペンターが抜け出し、金、SH矢富勇毅がつないでゴールに迫ったときには、割れんばかりの大歓声があがったが、ワラターズの凄まじいカバーディフェンスに囲まれて攻撃を継続できなかった。最後まで隙を見せなかったワラターズには脱帽するしかない。最終スコアは、12-57。9トライを奪われる完敗だった。

先発SHの茂野海人は「前半20分までは良かったと思います。攻めるスペースはいっぱいあったので、走って順目に順目に攻めたかったのですが…」とコメント。同じ方向に何度も攻めることができれば、もっとディフェンスを崩せていたはずだが、そこに走り込んでくる選手が少なかったという意味だ。走り勝つイメージが、プレー面で共有されなかったということだろう。個人のタックルミス、組織ディフェンスでのコミュニケーションミスで穴を作ってしまった失点も多かった。一方、ワラターズは前半の戦いの中でサンウルブズの特徴をつかみ、攻め方に一工夫加えた。ミスも少なく、ラグビーというゲームの駆け引きの面白さを再認識させてくれた懐の深さは見習うべきところが多い。

試合後は、フィールド上で、ホーム最終戦のセレモニーがあった。今季限りで退任することがきまっているマーク・ハメットヘッドコーチは、遠来のワラターズの質の高いラグビーに感謝の言葉を述べたあと、スタンドを埋めたファンに感謝した。「日本のスーパーラグビーのファンは世界一です」。

サンウルブズは、7月10日、南アフリカのプレトリアでブルズと対戦する。「タフなツアーになりますが、今回の教訓を生かしたい。応援してくれている人々が誇りに思える試合がしたいと思います」(マーク・ハメットヘッドコーチ)。

©JSRA photo by H.Nagaoka

CONTENTS
スローガン