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秩父宮にワラターズがやってくる!

コラム5/19(木) 19:00
スーパーラグビー2016は、2月26日の開戦から、8月6日の決勝戦まで約5カ月半にわたって行われる。6月は南北半球の国代表が対戦するウィンドウマンスとしてリーグは休止だ。サンウルブズで活躍する多くの選手も日本代表で活動することになるだろう。そして、7月2日、再開後のラウンド15で来日するのが、オーストラリアカンファレンスのワラターズだ。「ターズ」の愛称で親しまれるこのチームは、今年サンウルブズが対戦するチームの中では図抜けたスター軍団だ。昨年のラグビーワールドカップ(RWC)で準優勝のオーストラリア代表ワラビーズの中心選手がずらりと並んでいる。

オーストラリアのラグビーは1800年代に始まったが1864年にシドニー大学クラブができたのがオーストラリア人チームの始まり。シドニーを中心とするニューサウスウェールズ(NSW)州でラグビーは著しい発展を遂げた。そのNSW州代表がプロ化されたワラターズは、オーストラリアラグビー界の中心的存在であり、誇り高きチームだ。スーパーラグビーが発足した1996年から参戦して中堅チームとして常に上位をうかがい、2005年に初のファイナリストとなった。ここでは常勝軍団クルセイダーズに敗れて準優勝。2008年にも準優勝に終わり、2014年ついに悲願の初優勝を成し遂げる。

決勝戦が行われたシドニーのANZスタジアムには、スーパーラグビー史上最多の6万1823人が詰めかけた。相手は長年のライバルであるクルセイダーズだった。最後の最後まで勝敗の行方の分からない僅差勝負になったが、残り1分、SOバーナード・フォーリーが44mのPGを決め、33-32という1点差で初の頂点に立った。このチームを率いたマイケル・チェイカは、2009年にアイルランドのレンスターを率いてハイネケンカップ(現ヨーロピアンチャンピオンズカップ)を制し、北半球と南半球の最強リーグを制した初のコーチとなった。強いFWを作ってのアタッキングラグビーは、プレーする選手のモチベーションを高め、観客も楽しませる。才能ある選手を力の出やすいポジションに並べ、その能力を引き出す手腕は高く評価され、翌年オーストラリア代表のヘッドコーチとなり、RWCでは準優勝に導いている。

今季、チェイカの後を継いだのは、チェイカ体制下でアシスタントコーチを務めたダリル・ギブソン。元ニュージーランド代表CTBで、クルセイダーズでは4度、スーパーラグビーを制した。サンウルブズのマーク・ハメットヘッドコーチとは、オールブラックス、クルセイダーズ、カンタベリー州代表でともにプレーした間柄。互いの性格はよく分かっている。ギブソンはチェイカと同じく、アグレッシブにボールを動かしながら攻撃を仕掛けるスタイルを継承してているが、今季、ラウンド8までは2勝4敗と苦しんだ。その後は調子をあげ、ラウンド12を終えたところで、オーストラリアカンファレンスの首位に立っている。

メンバーは魅力的だ。前述のフォーリーは、2014年の決勝で決勝PGを含む7PGを決めて勝利の原動力となった。プレッシャーのかかったキックを涼しい顔で決めることから「アイスマン」の異名をとる。182cm、89kgとけっして大きくないが、7人制オーストラリア代表でプレーした経験もあり、キックだけではなく、ランでも魅せる。フォーリーとHB団を組んでゲームをコントロールするSHは、オーストラリア代表39キャップのニック・フィップス。強気のリードが光る。FBイズラエル・フォラウは、193cm、103kgのスーパーアスリート。13人制のラグビーリーグ、オーストラリアンルールズ、そして現在のラグビーユニオンと、3つのカテゴリーでプロとして活躍してきた。昨年のRWC後はNTTドコモレッドハリケーンズ入りが決まって騒がれたが、大会中の怪我が完治せず来日を見送った。最後尾のFBで相手のキックしたボールを難なくキャッチ、大きなストライドでのカウンターアタックは驚異の破壊力。今季はアウトサイドCTBにも挑戦している。

今季加入の注目選手と言えば、WTBザック・ギルフォード。2009年のJWC(U20ラグビー世界選手権)で来日すると、優勝したU20ニュージーランドでトライゲッターとして活躍、その後、期待通りにニュージーランド代表で10キャップを得た。ところが、飲酒による度重なる不祥事で信用を失い、国外へ。フランスのクラブでプレーしていたが、今季よりワラターズに加わったという異色のキャリア。地面を力強く蹴り、瞬時の加速からタックラーを振り切るプレーを日本でも披露してほしいところ。天才の名をほしいままにする万能BKカートリー・ビールは、ラウンド12に膝を負傷して手術。来日は難しいかもしれない。

先にBK陣を紹介したが、FW陣はさらに経験豊富なビッグネームが揃っている。スクラム最前列のPRベン・ロビンソンは、オーストラリア代表72キャップ。HOタタフ・ポロタナウは、元日本代表のホポイ・タイオネさんを叔父に持つ日本通で、ワラターズで出場した試合は、130を超える。ハンマーでぶっ叩くようなタックルは必見だ。巨漢LOウィル・スケルトンは、203cm、140kg、靴のサイズが36cmという巨漢。しかし、動きは俊敏でボールを持ってのド迫力の突進でディフェンダーを蹴散らしていく。まだ24歳で、末恐ろしい選手だ。突破力抜群のNO8ワイクリフ・パールー(オーストラリア代表57キャップ)、機動力あるLOディーン・マム(オーストラリア代表44キャップ)、リーダーシップのあるFLデイヴ・デニス(オーストラリア代表18キャップ)といった30歳以上のベテランがFW陣を引き締める。

そして、この才能集団のキャプテンを務めるのは、いまや世界屈指のオープンサイドFLとなったマイケル・フーパーだ。182cm、101kgのサイズは、世界レベルのFLでは小柄だが、元オーストラリア代表のジョージ・スミスと同じく、低い姿勢で動き回り、タックル後のボール争奪戦の中で瞬時にボールを奪う。ボール奪取だけではなく、タックル数は、ラウンド12までのスーパーラグビーで全体の2位。ボールを持っての突進でも簡単には倒れずに前に出る。2015年には3年連続でオーストラリアの最優秀選手に選ばれ、日本でも多くの若手選手が、憧れの選手にフーパーの名を挙げる。その献身的で、ゲームの先を読んだ動きを見ていると、ラグビーの奥深さを感じることができるだろう。

これら、各ポジションで世界トップクラスの選手が集うワラターズが、我らがサンウルブズと対戦する。ぜひ、多くのラグビーファンの皆さんでスタンドを埋め、試合の価値を高めてもらいたい。
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