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始まりが決める

コラム2/12(金) 16:00
そのチームの文化は「いちばん最初」が決める。そこに集った「オリジナル(始祖)」の者たちが「あくまでも勝利をめざす」と心に刻めば、100年後にも同じ色のジャージィは猛然と覇権に挑む集団となる。「観客の胸を躍らせるオープンなスタイルを求める」と誓えばこそ100年後に同じエンブレムの15人が「楽しくて強いラグビー」を貫くだろう。

 だからサンウルブズの初年度、そして初戦が大切なのだ。南半球のコンペティションに赤道の北側のチームが新しく参加する。国内シーズンの終了を待つ分、どうしても準備開始は遅れる(他の多くのチームは昨年のクリスマス前後から活動している)。それは来年度以降も変わらない。オーストラリア、南アフリカがベースのレベルズとキングスですら新加入のシーズンには苦闘が続いた。つまり白星ををつかむのは簡単ではない。マーク・ハメットHC(ヘッドコーチ)、堀江翔太主将はタフなスタートを覚悟している。願わくば、その覚悟に「未来への志」を含めてもらいたい。サンウルブズの100年後の姿、その原点、意思のかけらは、2月27日の秩父宮ラグビー場になくてはならない。

 いまや世界的フッカー、堀江主将が、先日、レベルズ在籍の経験をふまえて、こう語るのを聞いた。

「スーパーラグビーのボトム(下位)のチームは、プレーにおいて、どうして個々の選手の自己主張が前へ出てしまう。優勝経験のあるところは、まずチームありき、その上でそれぞれがが個性を発揮する」
 そこを理解しているリーダーがいるのは心強い。まず「我々のサンウルブズとは何か」だ。希望をまじえるなら、日本のラグビーの伝統、文化である「速さに重きをおく独自性」と「集団への帰属意識の高さ」が軸となる。素早く、独特で、チームのために身を捨てる。それは過去、何事かをなした日本代表の姿とも重なる。2015年のワールドカップの南アフリカ戦は最も甘美な記憶である。

 サンウルブズには、ジャパンの勇士がずらりと並んだ。驚異の運動量、稲垣啓太。総合的フットボーラー、堀江翔太。酒豪の鉄人、大野均。酒豪の重鎮、真壁伸弥。このFW前5人の仕事の質量、献身は、どこの強国でも通じる。SHの日和佐篤は、かの南アフリカ戦の世紀の勝利の「もっと称えられてよいヒーロー」だ。途中出場ながら、最後の一連の攻撃をひとつの判断のミスもなく仕切ってみせた。サモア代表の10番、サントリーの同僚、トゥシ・ピシとのコンビネーションは攻撃の中枢をなす。

 BKの立川理道、田村優は、いずれも場を呑み込む図太さをたたえる。山田章仁こそは「おそろしく身体の丈夫なファンタジスタ」である。スーパーラグビーのような本物の勝負では巧さよりも強さだ。ただ筋力や突破力という意味ではなく、心のたくましさが問われる。ブライトン(南アフリカ戦の会場)の緊迫を乗り越えた三者はすで有資格者だ。
 サンウルブズには、ここからインターナショナルの高いレベルへ名乗りを挙げる顔もそろった。国際ラグビーの成否をわける右プロップに、機転と走力でトライを奪える垣永真之介、重いスクラムの具智元、平野翔太が選ばれたのはバランスがよい。第3列、村田毅の賢さゆえのひたむきさも力となる。SHの矢冨勇毅は、あいつぐ負傷に泣く前、すでにスーパーラグビー級と評価されていた。遠回りして、傷はいえ、いよいよ真価を発揮しそうだ。

 もういっぺん書く。チームの文化は最初に決定される。そこには観客の熱意もきっと加味される。歴史の始まりを目撃できるファンは幸福なのだ。
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